「こんまり」流が全米に拡散――ネット番組のヒットで日本発の片付け術が急激に広まっている
お金をかけず、すぐに始められる
米メディア、アトランティックは、こんまり流メソッドが米国で急激に受け入れられていた理由として、生活を変えるためのアプローチとして、「リノベーションや装飾にこだわらない」ことを挙げている。整理整頓や片付けは、斬新なアプローチだったのだ。
確かに米国の人気ホームチャンネルHGTVなどでは、生活を変える方法として紹介されるメソッドは、「新しい家具」や「便利な家具」を導入したり、「部屋のリノベーション」が中心だ。整理整頓や、掃除をみっちり行う日本的な発想とは異なる。
日本では、学校生活の中で、掃除や整理整頓についてきっちり学ぶ文化が根付いている。一方米国では、家庭での指導が唯一学ぶ場所。また掃除でさえ、自分でやるものではなく、人にやってもらうものと考えている子どもがいるほどだ。そのため、大人になっても家の片付けができない人が意外に多いようだ。日本より広いスペースを持っている分、気づかぬうちにものに埋め尽くされた家に住んでいる人も多いのかもしれない。
持ち物を整理し、物欲との付き合い方を学び、生活スペースに自分にポジティブな気持ち与えてくれるものだけを集める。それだけで気分や生活をドラスティックに変えられることを次々とこの番組が証明することで、多くの人がインスパイアされ、行動を起こしていると言えるだろう。
番組成功の陰にレベルの高い通訳の存在
さてこの番組では、近藤は8割以上日本語で対話している。「キュンと」いう言葉をはじめとした、近藤のパーソナリティーを反映した独特の言葉使いを、的確に、ニュアンスも含めて英語に通訳しているのが、飯田まりえだ。こんまり流片付けの難しい表現方法をしっかりと捉え、米国人の出演者から共感を得られる言葉使いに変えて、通訳している点の素晴らしさは、すでに米国のエンターテイメント専門誌でも注目されるほどだ。
オンラインエンタメメディアの「QUARIZY」は、「飯田のスピンオフ番組があったらいいのに」というツイートを紹介。番組がこれだけ世界的な人気を見せている影の立役者こそ、飯田まりえだと言っても過言ではない。しかし、こうした人脈を味方につけたのも、近藤麻理恵の人柄であり、実力のうちだと言えるだろう。
自分で生み出した片付けメソッドを、世界に広めるために活動拠点を米国に移した近藤麻理恵。著書は海外でもすでに話題を呼んでいたが、今回ネットフリックスの番組公開は、その想像をはるかに超えた広がりを見せている。
日本だけでなく、世界でもお片づけ教祖として認められつつある今、時流に乗り、「世界中の人を、お片づけでときめかせたい」という思いを、本当に叶えるきっかけになりそうだ。