年末年始にごちそう続き? 疲れた胃腸を労わる方法を薬剤師に聞く
漢方薬は胃の機能の底上げか、今ある症状の解消かによって選ぶ
もし普段から胃腸を労わる養生法を実践しても胃のつらい症状が続いている場合は、漢方薬の助けを借りることもできる。
普段から疲れやすい胃腸の機能を回復する「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」
胃腸、つまり東洋医学でいう「脾」は飲食物を消化・吸収して得られた栄養物から体を動かすエネルギー「気(き)」や、全身のすみずみへ栄養を与える「血(けつ)」を作って体中に運ぶ役割をしている。この「脾」そのもののはたらきが低下して、全身の気が不足がちになっている場合に適した漢方薬が「補中益気湯」だ。
【こんな人に】
□普段からあまり食欲がない
□胃下垂や内臓下垂がある
□虚弱体質で疲れやすい、だるい、風邪をひきやすい
今あるつらい胃腸症状を和らげる「六君子湯(りっくんしとう)」
胃腸の「気」の巡りが悪くなって、栄養や水分をうまく全身に運ぶことができずに胃腸に水分や食べ物が停滞した状態になると、お腹の張り、悪心、食欲不振などの症状が起こる。このような状態のときに用いるのが「六君子湯」だ。
【こんな人に】
□お腹が張る
□胃がもたれている
□吐き気がする
□軟便気味
「補中益気湯」は全身の「気」の不足を補い、胃腸の機能を根本的に立て直してくれる。これに対し、「六君子湯」は胃にたまった余分な水分を取り除いて吐き気や胃腸の不快な症状を取り除いたり、「気」の巡りの悪さを改善してくれる。
今あるつらい胃腸症状を和らげたい場合は「六君子湯」、普段から疲れやすい胃腸の機能を底上げしたい場合は「補中益気湯」を選択するのがポイントだ。現在胃腸のつらい症状があれば、まず「六君子湯」で改善し、その後、胃腸の機能を立て直したい場合は「補中益気湯」を続けるのが有効だ。
【参考記事】「なぜ私のカゼに葛根湯が効かないのか」──薬剤師に聞くその理由とは
[執筆者]
高垣育
薬剤師ライター。2001年薬剤師免許を取得。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。2017年国際中医専門員の認定を受ける。毎週100人ほどの患者さんと対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。