「服は毎日変えない」新常識に? 着るものの買い方、選び方は変わっていくか
ファッション業界は石油業界に次ぐ汚染者
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調べによると、世界規模で消費者の洋服の「所有率」を調べたところ、2000年に比較して2014年ではなんと60%も多くの服を購入しているという。一方で1製品の保有期間は、それまでの半分に減った。
つまり、「ファストファッション」がすっかり根付いてしまったのだ。米国のトップファッションデザイナーで、主にミセスラインを手がけるアイリーン・フィッシャーは、2015年環境保護団体リバーキーパーズのパーティーにて、自身が身を置くファッション業界を「石油業界に次いで、世界で二番目に地球を汚染している汚い業界だ」と表現した。
創業当初から環境に配慮した天然素材にこだわり、従業員の労働環境改善を行うなど、超ホワイト企業として評価されている企業の会長であるフィッシャーによる痛烈な業界批判は、同時にそれだけファッション業界が現代社会に大きなインパクトを与えていることを表している。
さらに、米ニュースサイトのAlternetによれば、オーガニックコットンの製品を購入することは、確かにそうでないものを購入するよりも良いかもしれないが、Tシャツ1枚とジーンズ1本分のオーガニックコットンを生産するだけで、5,000ガロン(約1万8900リットル)の真水が必要だ。なお、東京都の2人家族の1家庭あたり、「1カ月」の平均使用水量が1万5900リットル。フィッシャーが、ファッション業界を色々な意味を込めて「messy(めちゃくちゃで汚い)な業界」と表現したのも頷ける。
メーガン妃とサステナブルファッション
一連の真の「アンチファストファッション」の流れに共感しているのは、一般市民のムーニー教師だけではない。英国王室に入ったばかりのヘンリー王子の妻で、米国中流家庭出身のメーガン妃もその一人。女優という仕事をこなしながら、積極的な慈善活動を行なってきたメーガン妃は、国連の親善大使や、国際NGOのグローバル・アンバサダーとしても活動してきた。
そんな彼女は、王室に入ってからも自身の世界観を、ファッションを通じて表現してきた。その一つが、英国ブランド、特にフェミニストを自称するメーガン妃らしく、女性がリーダーシップを発揮しているブランドの製品を積極的に着用していること。また、環境問題や環境保護活動に力を入れているブランドを意識的に選んでいることだ。
例えば、オーガニックコットンでできたオーストラリアのブランド「アウトランド(Outland)」は、人身売買から助けられた女性職人たちの就労支援を、デニム生産を通じて行なっていることで知られているブランドだ。そのアウトランドのデニムは、メーガン妃のお気に入りの一着のようで、今年メーガン妃とヘンリー王子が行なったロイヤルツアー(慰問活動)で、「6回」も着用している。このデニムに限らず、メーガン妃はたびたび同じ服を公式活動の中で着用している。
こうした一連のメーガン妃のファッションを報じた米タイム誌に、スタイリストで、ブランドコンサルタントであるレイチェル・ワンが次のようなコメントを寄せている。「メーガン妃のファッションは、ファストファッションから、ラグジュアリーファッションまで、とにかくファッションそのものが、環境保全や劣悪な労働環境で苦しむ人の存在など、すべてに影響していることを広く意識させるきっかけを作っている」
「服の回収」も大きなトレンドの一つ
とはいえ、ファッション業界も必死だ。ビジネスを続けることと、サステナビリティを維持することを両立するために、今業界で広まりつつあるのが「服のライフサイクルの終わり」に、その服を回収し、リサイクル素材として再利用することだ。H&M、ゲス、コロンビアスポーツは、こうした動きを牽引するその代表的なブランドだ。日本のユニクロも2006年からリサイクル活動を行なっており、その規模も寄付から、商品への再利用と幅広い。
しかし結局のところ、消費者である我々一人一人が、どれだけ意識を持つかによってすべては大きく変わるだろう。何を買うか、買わないかという行動は、その人がどのように生きたいかという究極のゴールに結びついていく。ファッションとサステナビリティについて研究を行なっているスローファクトリー の創設者で、クリエイティブディレクターのセリーヌ・シーマンは「サステナブルファッションとは、つまるところカルチャーだ。購入する、しないや、それを着る、着ないという意思決定をする以上のものだ」
毎日の服を着るという意思決定が、世界の環境問題と大きく結びついているのだ。