「なぜ私のカゼに葛根湯が効かないのか」──薬剤師に聞くその理由とは
つらい症状のまま頑張る日も…(写真はイメージです) torwai-iStock
<カゼには葛根湯が有効と思いがちだが、東洋医学の考えによると対処の仕方はカゼの種類によって異なる。薬剤師が解説する>
カゼっぽいけれど仕事や家庭のことに忙しくて病院を受診する時間がとれない。つらい症状を抱えたままつい頑張り過ぎてしまう......。そんなときに役立つのが東洋医学の考えに基づくセルフケアだ。
「葛根湯」が効かない理由
つらいカゼの症状を市販薬でセルフケアしようと思って葛根湯を飲んだのに症状が改善しない。
それはなぜなのか、東京薬科大学薬学部中国医学研究室准教授で漢方薬局「東西薬局」代表薬剤師、医学博士の猪越英明博士に伺いながら解説しよう。
「東洋医学ではカゼは文字通り風の邪気、「風邪(ふうじゃ)」 が体の中に侵入して起こると考えられています。その際、風邪は『寒』『熱』『湿』などのさまざまな他の邪気を伴って体内に侵入します」(猪越博士)
そのため「カゼ」と一口に言ってもどの邪気が侵入したかによってさまざまな種類があり、セルフケアの方法が異なる。これが「前回のカゼのときは葛根湯で楽になったのに今回は改善しない......」ことの理由だと考えられる。
ゾクゾクした寒気が特徴の「青いカゼ」
ではカゼにはどのようなタイプがあって、それぞれどう対処すればよいのだろう。
カゼには代表的な2つのタイプがある。「風邪(ふうじゃ)」に「寒」を伴った「ゾクゾク寒気がする青いカゼ」と「熱」を伴った「のどが腫れて痛い赤いカゼ」だ。
まずは「青いカゼ」の特徴と症状を和らげる対処法からみていこう。
風邪が「寒」の邪を伴ったカゼを東洋医学では「風寒邪(ふうかんじゃ)」という。「青いカゼ」かどうかは症状をみると判断できる。
代表的な症状
□ゾクゾクと寒気がする
□肩や首筋が凝って、節々が痛い
□暖かい部屋にいたい。温かい飲み物や食べ物が食べたい
□色の薄い透明に近い鼻水や痰がでる
手当ての方法
ゾクゾクして寒いので体を温めることが大切。上着を1枚多く羽織るなど外から体を温めるのとともに、温かい飲み物や食べ物で内側からも体をぽかぽかにしよう。
漢方薬は汗をかいているか、かいていないかで選ぶ。汗をかいていない場合は「葛根湯(かっこんとう)」、汗が出ていて寝間着を着替えたりするような場合には「桂枝湯(けいしとう)」を選択する。
「寒気がして汗をたくさんかいている方が葛根湯を服用すると汗が出すぎて脱水になるおそれがあり、体力を消耗してしまいます」(猪越博士)
汗の有無の見極めが青いカゼの漢方薬選びのポイントだ。
手当てに役立つ食材は体を温めるネギ、ショウガ、黒糖など。温かい飲み物にショウガと黒糖をいれると飲みやすく、おいしく摂りながら体を温め養生することができる。ネギをたっぷりいれたスープもおすすめだ。