世界が絶賛するソリスト、田中彩子に学ぶ「世界で輝く」秘訣
「天使の歌声」が生まれるまで...
CD「華麗なるコロラトゥーラ」、「ウィーンの調べ」も絶賛発売中 Photo:J-Two
「天使の歌声」と敬称される田中の歌声は、いかに創り出されるのか。彼女は、ウィーンの森をよく散歩し、自然の音を聴きにいくという。
「私の歌声は『鳥の鳴き声』に近いと言われいます。鳥の声は本当に美しい。そんな声を自然に私も出せるよう、森の中にずっと座って鳥の鳴き声を聞いています。
それに多くのクラシック音楽は、もともと自然の音からインスピレーションを得ているものも多い。葉っぱがザワザワと風に揺られる音、水滴がポタポタと滴る音など、集中して耳を澄ましています」
また、歌詞のなかの「言葉」を理解することも重要だ。今年の9月と10月には日本でリサイタルツアーが開催される。「愛しのコロラトゥーラ」をテーマにしている今回は、「愛」について理解を深めているという。
「『愛』といっても異性間だけじゃなく、家族愛、友達への愛、一般的に神様に対しての愛情もある。それに『好き』という言葉も、情熱的に伝えている場合もあれば、叶わない恋を想っているもの、過去の恋を偲んでいる場合もある。様々な可能性を考えて歌うようにしています」
音楽に真摯に向き合ってきた田中だが、そんな彼女の原動力とは?
「音楽は現実から離れた、別世界を提供してくれる。子供の頃学校で嫌なことがあっても、ピアノを弾くことで夢を見ることができた。だから、私もそういった『別世界』を提供できるよう、貢献していきたいです」
パリからアルゼンチンに渡り、現在ブエノス・アイレスにてコンサートツアー中の田中。
「アルゼンチン政府が支援する、エル・システマと同様のプログラムで作られた国立青少年オーケストラとの共演のため来ています。エル・システマとは、虐待されたり犯罪に手を染めてしまいやすいような、極度に貧しい環境にいる子供たちに、音楽教育を施すことにより新しい道を与え救うためにベネズエラで確立し、今世界中の貧困層の子供たちに新しい希望を与えています。
そのような環境から這い上がって結成したこの国立青少年オーケストラは、通常では考えられないような生活環境の中から、たったひとつの音楽という希望を見いだし、舞台に立っている間は日常の日々を忘れ、貧富の差がなくなることを願いながら一緒に音楽を演奏しています。
演奏側も見ている側も勇気の出るこの力強い瞬間を感じ、音楽の可能性に改めて感動する――。今後もこのような『音楽の力』に出会って行きたいです」
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「田中彩子 ソプラノ・リサイタル 2018 〜愛しのコロラトゥーラ〜」
出演:田中彩子(ソプラノ) 加藤昌則(ピアノ)
●2018年10月7日(日)
開場 14:30 開演 15:00
会場:印西市文化ホール(千葉県印西市)
ご予約・お問い合せ:印西市文化ホール 0476-42-8811
●2018年10月11日(木)、17日(水)
開場 18:30 開演 19:00
会場:紀尾井ホール(東京)※17日は追加公演
お問い合せ:キョードー東京 0570-550-799
その他、三重、京都、札幌にて公演予定。詳細は公式ホームページにて掲載。
<公式HP>Ayako Tanaka Official Web site
[執筆者]
西川彩奈
フランス在住ジャーナリスト。1988年、大阪生まれ。2014年よりフランスを拠点に、欧州社会のレポートやインタビュー記事の執筆活動に携わる。過去には、アラブ首長国連邦とイタリアに在住した経験があり、中東、欧州の各地を旅して現地社会への知見を深めることが趣味。女性のキャリアなどについて、女性誌『コスモポリタン』などに寄稿。パリ政治学院の生徒が運営する難民支援グループに所属し、ヨーロッパの難民問題に関する取材プロジェクトなども行う。日仏プレス協会(Association de Presse France-Japon)のメンバー。
Ayana.nishikawa@gmail.com