異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲まない理由が悲しすぎる
水汲みのために5~20キロメートルの距離を歩くことも Jayanta Dey-REUTERS
<レイプやハラスメントを避けようと結局、自分の健康を犠牲にしている。健康よりも身の安全を優先せざるを得ない彼女たち>
熱波と史上最悪の水不足に見舞われるインド。英字紙ヒンドゥスタン・タイムズによれば今年4月に、マハーラーシュトラ州のナーグプルで摂氏45.6度、ヤバトマルで同44.5度を記録し、同月としては過去10年で最高気温となった。
5月にはシンクタンクが水不足について警告。歴史上最も深刻なレベルの水不足が発生したとメディアは伝えており、CNNなど複数報道によると、炎天下で人々は水を手に入れるために相当な苦労をしている。
さらに、熱波と水不足はインドならではの理由から、女性たちの体に深刻なダメージを与えている。
インドの首都デリー。立っているだけで汗が噴き出るこの街のスラムに住む13歳の少女モナ(仮名)は、わざと水を飲まないようにしている。用を足すためにトイレに行きたくないのだ。
英BBCの取材に答えた彼女は「トイレには悪い男たちがいるかもしれない。だから、水を飲むのはなるべく控えるの。トイレに行くのが怖い」と話した。
モナは水だけでなく、食事の量まで抑え、トイレに行くことを避けている。それでも1日にたった1度だが、トイレに行くのを我慢できるはずもない。早朝か夜遅い時間を狙って、他の女性たちと数人で行く。
国連の統計によると、インドでは約5億2400万人が屋外で「誰にでも見られる」状態で排泄しているという。衛生環境の改善は公にも言いやすい。ただ、同時に問題になっている女性への性暴力に対する恐怖心が、どんなプレッシャーを与えているのか? これについては、実際の被害が表面化していないせいか、頻繁に起こるレイプ事件のせいか、なかなか焦点が当たらない。
【参考記事】トイレ普及急ぐインド 「辱め」を受ける外で排泄する人たち
「レイプされるんじゃないか」という恐怖と毎日戦う
外で排泄する女性の多くが、男性からじろじろ見られるなど卑猥なハラスメントの標的になる。
公衆トイレを利用するというサビータはある日、そのトイレで女性が暴行されている現場に出くわした。毎日その恐怖を抱えながら生活する。「だから私たちは毎回女だけで集まって、森に入って用を足すわけ。いちいち頼まなければならない」
モナもサビータも、レイプやハラスメントを避けようと結局、自分の健康を犠牲にしている。健康よりも身の安全を優先せざるを得ない彼女たちの身に、何が起こるだろう。
【参考記事】インドの性犯罪者が野放しになる訳