失速ヒラリーが乗り出す「私だって人間」作戦
本命のはずが支持率は下降気味。陣営はイメージチェンジによる人気再浮上を狙うが
笑いを取れ 人気トーク番組『エレンの部屋』では、流行中のダンスに挑戦 Lucas Jackson-REUTERS
アメリカ人は人間味がある政治家が好きだ。バラク・オバマ米大統領が冗談を言うのも、そんな「国民性」があるからこそ。隙がないミット・ロムニーが12年大統領選でオバマに負けたのも、おそらくそのせいだ。
次期大統領を目指して民主党候補指名を争うヒラリー・クリントンも、それを意識し始めたのだろう。ニューヨーク・タイムズ紙の記事によれば、クリントン陣営はイメージチェンジに踏み切るつもりらしい。
先週掲載された記事のタイトルは「より開放的でユーモラスなヒラリー・クリントンに、と顧問は語る」。選挙参謀たちは彼女に、もっとソフトな一面を見せるよう求めているという。人間的で感情豊かな人物像を打ち出してイメージを刷新──記事で報じられている発言からは、そんな目標がうかがえる。
この夏、クリントンはバッシングの的だった。原因は、国務長官時代に個人のメールサーバーとアドレスを公務に使用していた問題。おかげで信頼性に傷が付き、好感度は下がる一方だ。
ニューヨーク・タイムズの電話インタビューに応じたクリントン陣営の広報責任者、ジェニファー・パルミエリは「大きな問題にも小さな問題にも取り組む」政治家としてアピールしたいと語っている。だが、具体的にどうしていくのかを語る言葉は記事にない(本誌は陣営関係者にコメントを求めたが、返答は得られなかった)。
クリントンは今月16日、人気の深夜トーク番組『トゥナイト・ショー』に出演する。その数日前には、大統領選出馬を検討するジョー・バイデン副大統領も別の深夜番組に登場した。深夜トーク番組の活用は、今回の選挙戦の大きな特徴だ。
この手のメディア戦略は、クリントンにとって見慣れたもの。92年大統領選で候補だった夫ビルは、ベトナム戦争の徴兵忌避疑惑や不倫疑惑が持ち上がると、当時の候補者としては珍しく朝の番組に出演。深夜のトーク番組でのサクソホン演奏も披露して有権者の心をつかみ、大統領選に勝利した。
メール問題では謝罪へ
クリントンの戦略変更も夫の場合と似たようなものだ。ただしクリントンは既に何度か、イメージチェンジを試みている。今年に入ってから、記者らを招いてカジュアルな夕食会を開き、選挙運動中にファストフード店で食事をしたりもした。
だが努力は功を奏しているように見えず、メール問題は膨れ上がるばかり。ニューヨーク・タイムズの記事によれば、面白くて温かみのある「普段のクリントン」を知ってもらう作戦に、陣営は期待をかけている。