ドローン操縦士を襲うPTSD
精神を病む操縦士が続出して出撃回数を減らさざるを得ない事態に
過酷な任務 人が苦しみながら死んでいくのが目の前で鮮明に見える Getty Images
ドローン(無人攻撃機)に従事する米軍の操縦士たちに、45人の退役軍人が連名で任務放棄を呼び掛けた。
「アフガニスタン、パキスタン、イエメン、ソマリア、イラク、そしてフィリピンで、少なくとも6000人の命が不当に奪われた」と、彼らは書簡で主張する。「ドローン攻撃は、国際法違反で人権の原則にも反している」
オバマ米大統領は年頭の一般教書演説で、「ドローンのような新技術の使用は抑制するよう努めてきた」と語った。しかしロンドンに本拠を置く調査報道協会によると、米軍は昨年、様々な局面でドローン攻撃を増加させている。
退役軍人が任務放棄を訴えたのは、米空軍で一日当たりのドローン出撃回数を65回から60回に減らすことが明らかになったから。任務のストレスでドローンの操縦士が減っているのだ。
操縦士は、一日12時間以上も無数のコンピュータースクリーンを睨んで過ごすこともある。ドローンを操縦して数千キロ離れた標的を監視し、攻撃する。元ドローン操縦士のブランドン・ブライアントは本誌の取材に答えて、自分の最初のドローン攻撃についてこう話している。
アフガニスタンのどこかの道を、自動小銃を抱えた男が3人歩いていた。前の2人は何かでもめている様子で、もう1人は少し後ろを歩いていた。彼らが誰なのか、知る由もなかったとブライアントは言う。上官が彼に下した命令は、何でもいいから前の2人を攻撃しろというもの。「1人より2人のほうがいい」からだ。
土煙が収まると、目の前の画面には大きくえぐれた地面が表示されていた。2人の肉体の断片が散らばり、後ろにいた男も右脚の一部を失って地面に倒れていた。「男は血を流し、死にかけていた」。赤外線カメラの映像に白っぽく映る血のりは地面に広がり、冷えていった。「男はやがて動かなくなり、地面と同じ色になった」。
こうした任務の後、ドローン操縦士たちは家路について市民生活に戻る。