希望の見えたTPPだが大統領選で頓挫する?
オハイオは落とせない
大統領選との関係で言えば、自動車産業の問題はさらに大きい。アメリカの自動車メーカーと業界団体は以前から安全・環境基準など日本の非関税障壁に抗議し、日本の自動車市場は先進国で最も閉鎖的だと主張している。
自動車産業は議会に大きな影響力を持つ。昨年は民主党下院議員の20%近くが、非関税障壁を理由として、TPP交渉に日本を参加させることに反対する書簡を大統領に送った。
これらの問題がすべて集約されるのがオハイオ州だ。オハイオ州は大統領選で常にカギを握ってきたが、最近ではさらに重要性が増している。特に共和党にはその傾向が強く、オハイオ州で負けた共和党候補は最終的に大統領選で民主党候補に勝利したことがない。
12年の大統領選でオバマに敗れた共和党大統領候補ミット・ロムニーについて、政治ジャーナリストのダン・バルツはこう書いた。「オハイオ州で負けても選挙に勝つ可能性は数字的にはあったが、政治的にはほとんど考えられなかった」
というのも、オハイオ州はアメリカの自動車産業の中心であるミシガン州に接しており、経済面でも自動車産業と密接な関わりがあるためだ。ロムニーはニューヨーク・タイムズに08年、「自動車産業は政府の救済を期待するより、構造的な破綻を経験すべきだ」という論説を寄稿した。その時点で大統領選の勝利はなくなったと多くの人が考えている。編集部が付けた「デトロイトを破産させろ」というタイトルは、ロムニーに痛烈な打撃をもたらした。
共和党はロムニーの例から学んだと考えて間違いないだろう。大統領になりたければ自動車産業を敵に回すわけにはいかない。その点が何よりもTPPに不利に働く可能性がある。
From thediplomat.com
[2014年11月18日号掲載]