あの国がアメリカの人権侵害の実態を「暴露」
人権侵害の数々を国連から非難されたあの国が、自分を棚に上げてアメリカ批判。だが、意外と否定しきれないものも多い
言い得て妙? 北朝鮮の御用メディアによれば、アメリカは「生存権のツンドラ地帯」 KCNA-Reuters
国連は今年2月、北朝鮮における人権侵害に関する調査結果を発表。その惨状は「現代世界に類のない」ものだと断定した。
これに反発する北朝鮮は、史上最悪の人権侵害で肩を並べる国があると指摘した。やり玉に挙がったのはアメリカだ。
北朝鮮政府のお抱えメディア、朝鮮中央通信(KCNA)は4月末、アメリカこそ「生き地獄」だとする独自の調査結果を伝えた。その結論は「アメリカは世界最悪の人権侵害国であり、人間の生存権のツンドラ地帯だ」というものだった。
何ともひどいでっち上げ......と、言い切れない指摘も実はある。いくつか見てみよう。
■「アメリカの正体が人種差別王国であることは、フロリダ州で無実の黒人少年を射殺した白人警官が昨年、無罪評決を受けたことで明らかになった」
被告のジョージ・ジマーマンが警官という説明は間違っている。ただし、差別的な評決という見方に同調するアメリカ人は大勢いるだろう。
■「国民の52%がいまだに人種差別があるとし、46%がさまざまな差別は永遠になくならないとみている」
最初の数字はむしろ楽観的だ。昨年6月のピュー・リサーチセンターによる世論調査では黒人の88%、白人の57%が、アフリカ系アメリカ人はある程度差別されていると答えた。
2番目の数字は、CBSニュースの世論調査の引用だろう。そこでは白人の60%、黒人の55%が人種間の関係は「おおむね良好」と回答したが、全体の46%(白人44%、黒人61%)が人種差別は永遠に続くとしている。
■「昨年の住宅価格は前年比11.5%上昇し、今年1月には前年比13.2%上昇。多くの人がホームレスになった」
連邦住宅金融局(FHFA)の資料を見ていないらしい。確かに13年第1四半期の住宅価格指数(借り換えを含む)は、前年同期より2.32%高かった。今年2月の住宅価格指数(季節調整済み)は前年同期比6.9%の上昇。だが北朝鮮が言うほど急上昇はしていない。