最新記事

北朝鮮

あの国がアメリカの人権侵害の実態を「暴露」

人権侵害の数々を国連から非難されたあの国が、自分を棚に上げてアメリカ批判。だが、意外と否定しきれないものも多い

2014年5月23日(金)12時51分
ジェス・ジマーマン

言い得て妙? 北朝鮮の御用メディアによれば、アメリカは「生存権のツンドラ地帯」 KCNA-Reuters

 国連は今年2月、北朝鮮における人権侵害に関する調査結果を発表。その惨状は「現代世界に類のない」ものだと断定した。

 これに反発する北朝鮮は、史上最悪の人権侵害で肩を並べる国があると指摘した。やり玉に挙がったのはアメリカだ。

 北朝鮮政府のお抱えメディア、朝鮮中央通信(KCNA)は4月末、アメリカこそ「生き地獄」だとする独自の調査結果を伝えた。その結論は「アメリカは世界最悪の人権侵害国であり、人間の生存権のツンドラ地帯だ」というものだった。

 何ともひどいでっち上げ......と、言い切れない指摘も実はある。いくつか見てみよう。

■「アメリカの正体が人種差別王国であることは、フロリダ州で無実の黒人少年を射殺した白人警官が昨年、無罪評決を受けたことで明らかになった」

 被告のジョージ・ジマーマンが警官という説明は間違っている。ただし、差別的な評決という見方に同調するアメリカ人は大勢いるだろう。

■「国民の52%がいまだに人種差別があるとし、46%がさまざまな差別は永遠になくならないとみている」

 最初の数字はむしろ楽観的だ。昨年6月のピュー・リサーチセンターによる世論調査では黒人の88%、白人の57%が、アフリカ系アメリカ人はある程度差別されていると答えた。

 2番目の数字は、CBSニュースの世論調査の引用だろう。そこでは白人の60%、黒人の55%が人種間の関係は「おおむね良好」と回答したが、全体の46%(白人44%、黒人61%)が人種差別は永遠に続くとしている。

■「昨年の住宅価格は前年比11.5%上昇し、今年1月には前年比13.2%上昇。多くの人がホームレスになった」

 連邦住宅金融局(FHFA)の資料を見ていないらしい。確かに13年第1四半期の住宅価格指数(借り換えを含む)は、前年同期より2.32%高かった。今年2月の住宅価格指数(季節調整済み)は前年同期比6.9%の上昇。だが北朝鮮が言うほど急上昇はしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中