最新記事

米犯罪

顔食い男と、疑われた薬物「バスソルト」

ホームレスの顔面を食いちぎった男からは合成覚せい剤「バスソルト」は検出されなかったものの

2012年6月28日(木)17時28分
ジル・ラングロイス

マンイーター 射殺された「マイアミ・ゾンビ」、ユージーン Miami-Dade Police Department-Reuters

 全裸で生きた人間の顔を食いちぎり、警察の銃弾を受けても食べ続けた「マイアミ・ゾンビ事件」から1カ月。男性ホームレスの顔面を襲ったとされる容疑者ルディ・ユージーン(31)の体内からは、使用が疑われた脱法ドラッグの「バスソルト」は検出されなかった。フロリダ州マイアミ・デード郡検視局の検視官が27日、明らかにした。

 検視局によれば、ユージーンの体内から検出されたのは大麻成分だけで、他にコカイン、LSD、覚せい剤、ヘロイン、合成マリファナといった麻薬成分は見つからなかった。アルコール、処方薬、麻薬用混合物も確認されず、ユージーンの異常行為の原因ではないかと疑われた合成覚せい剤バスソルトの成分も検出されなかった。

 ユージーンは5月26日、幹線道路上でホームレスの顔面を食べているところをマイアミ・ヘラルド紙社屋の遠隔カメラによって撮影された。現場に駆け付けた警察が止めようとしたが、ユージーンが従わなかったため、警官にその場で射殺された。

 マイアミ・ヘラルド紙によれば、被害者のホームレスは回復に向かっている。ただ額と頬を含む顔面の約50%がかみちぎられており、脳に外傷があるほか、感染症にもかかっている。胸部にもかまれた傷があるという。

 バスソルトは多くの州で禁止されているものの、連邦法による規制がないためネットやコンビニで容易に入手できる脱法薬物だ。覚せい剤成分のアンフェタミンや中枢神経系を刺激するメフェドロンを含み、被害妄想や攻撃性の増大を招く。体温が上昇する場合もあり、容疑者のユージーンが全裸だったことからバスソルトの使用が疑われていた。

 ユージーンがなぜこのような奇怪な行動に走ったか、本人が死んだ今となっては分からない。今回の事件でこそ「無実」だったが、全米でバスソルト摂取後に他人の顔にかみついたり、自分を傷つける事件が多発している。

 ソンビの恐怖が繰り返される日は遠くないかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中