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アメリカ社会ミシェル・オバマに人種差別の厚い壁
「暴露本」の出版でまたも「怒れる黒人女性」のレッテルを貼られたファーストレディー
根強い偏見 たとえ大統領夫人でもアメリカの黒人女性の現実は厳しい Joshua Roberts-Reuters
4年前にミシェル・オバマが初の黒人ファーストレディーになることが決まったとき、多くのアフリカ系アメリカ人は変化を期待した。
長身でハーバード大学法科大学院卒、良き妻にして2人の娘の母──。ミシェルには無視できない品格と魅力と知性がある。彼女が黒人社会の例外ではなく手本であることに、世間はいずれ気付く。あらゆる人種の女性が雑誌の表紙を飾り、映画からは黒人女性のステレオタイプが消える。「怒れる黒人女性」というレッテルとも永遠にさよならだ──と。
残念ながら期待は裏切られた。ジャーナリストのジョディ・カンターは最近出版した「暴露本」で、ミシェルと大統領側近の衝突の多さを指摘。結果的に、黒人女性に対する偏見の根強さを浮き彫りにした。
「バーバラ・ブッシュ以上に怒りっぽい人がいただろうか? ローラ・ブッシュも思ったことを口にしていたのに、ミシェルだけ非難される」と、黒人女性向け雑誌「エッセンス」の元編集顧問ミッキ・テイラーは嘆く。
メディアのミシェルたたきは今に始まったことではない。08年の大統領選でオバマが有力候補に浮上すると、ミシェルは服装や髪形、スピーチでの言葉遣い、眉の形まで批判された。08年7月のニューヨーカー誌の表紙では、眉をつり上げ、アフロヘアでマシンガンを背負った姿で描かれた。
「アメリカがミシェルをどう見ているかを思い知らされた」と、ジョージア州アトランタの女子大生は言う。「黒人女性は教育の有無に関係なく色眼鏡で見られる。既婚でも未婚でも関係ない。ミシェルがそれを変えると信じていたけれど、何も変わらなかった。ミシェルが何をしても何も変わらない」
大統領選の影もちらつく
ミシェルはドレスや花柄の服も身に着け、選挙演説のトーンやテーマも変えた。夫の大統領就任後は軍人の家族の支援や子供の肥満防止など、無難な問題に専念している。ホワイトハウス筋によれば、「ミシェルは第二のヒラリー・クリントンになるつもりはなく、ヒラリーのように大統領の職務に首を突っ込んで反発を買う気もない」
大統領側近と衝突していると書かれたことについて、ミシェルは先週、CBSテレビのインタビューで次のように語った。「ホワイトハウスに内輪もめがあって私が『強い女』だというほうが話が面白いのでしょう。夫の出馬表明以来、メディアは私を怒れる黒人女性に仕立てたがる」
カンターはミシェルが初の黒人ファーストレディーとして自意識過剰になっているとも指摘しているが、そうなったとしても無理はない。ミシェルは黒人女性がショービジネス以外で成功する道があると、多くの若い女性に希望を与えられる立場にいるのだから。
ホワイトハウスの内紛にファーストレディーが輪を掛けるという構図は右派陣営には好都合だと、オバマの支持者は言う。「オバマに怒っている人が大勢いるから、オバマと関連するものはすべて巻き添えになる。ミシェルもそうだ」と、黒人女性向け情報サイトの編集者は言う。
「誰からも好かれるなんて無理」とテイラーは言う。「自分の役目を果たし、自分が強く望むことをすべき。他人の目を気にし過ぎていたら、やるべきことがやれない。世の中そんなものじゃない。ミシェルは聡明な女性で、たくさんの可能性を秘めている」
[2012年1月25日号掲載]