マイケルを死に追いやった麻酔薬プロポフォールの脅威
睡眠導入剤としてM・ジャクソンに投与された薬はとんでもなく強力で危険な麻薬だった
乱用も多い マーレー医師の公判で検察側がマイケルの死因の説明に使ったスライド Reuters
マイケル・ジャクソンの急死から2カ月後の09年8月、ロサンゼルス郡検死局は死因を「急性プロポフォール中毒」と断定した。だがこのとき、マイケルの専属医コンラッド・マレーがなぜあんな強力な麻酔薬を投与したのかと、疑念を抱いたのはファンだけではあるまい。
過失致死罪で現在公判中のマレーは、マイケルの睡眠を助けるために投与したと主張しているが、プロポフォールは睡眠導入剤ではない。「適切な使用範囲から懸け離れた用法だ」と、麻酔専門医のビバリー・フィリップは言う。
さらに最近、専門家らはこの薬が娯楽目的の麻薬として乱用される可能性に注目し始めた。「ヘロインのような麻薬ではないし、恍惚感もない」と、麻薬専門医のイーサン・ブライソンは言う。「だが意識がなくなったりボーっとなったりする。また性的虐待とプロポフォールによる逃避行為には関係がある」
少年に対する性的虐待容疑で告発されたマイケルは、父親に肉体的・精神的に虐待されたと訴えた。「マイケルのプロポフォール使用と性的虐待を関連づけるとしたら、子供時代に受けた虐待のほうであって、大人になってから他人に加えた虐待ではない」と、ブライソンは言う。
麻酔薬としてのプロポフォールは脳の受容体に働き掛け、無意識状態をつくり出す。同時にドーパミンの分泌を促し、セックスやコカインと似た快楽を得ることができる。陶酔状態に陥ったり性欲を抑えられなくなったり、幻覚を見る人もいる。