FRB金融緩和策のヤケクソ度
FRBの追加緩和策は自暴自棄の危険な行為。崖っぷちの米経済を猛烈なインフレが襲う
市場では今、アメリカの中央銀行に当たるFRB(米連邦準備理事会)が11月早々にも追加金融緩和に動くという観測が支配的になりつつある。目標は長期の米国債や住宅ローン、社債などに適用される長期金利を少しずつ引き下げること、それによって景気を刺激することだ。
追加緩和でどの程度金利が下がるか、またそれによってどれだけ生産や雇用が増えるかはっきりしない。はっきりしているのは、追加緩和はほとんど自暴自棄の危険な行為だということ。経済再生のためのアイデアが尽きた証拠だ。
FRBは自身の存在意義を見失っているようだ。アラン・グリーンスパン前議長の下では繁栄の守護者としてあがめられたのに、今は当時の栄光を取り戻せずに四苦八苦している。
金融危機が最も深刻だった08年後半から09年前半までの時期、FRBは貸し手に見捨てられた金融機関に信用を供与した。また、約2年間にわたって短期金利をほぼゼロに近い水準に保ち続けた。
追加緩和は焼け石に水
第2の世界恐慌が避けられたのはこうした政策のおかげという見方もできるが、それが力強い景気回復の起爆剤にならなかったことも明らかだ。
現FRB議長ベン・バーナンキは講演のたび、ゼロ金利の現在でもなお経済を再生して失業率を下げる政策手段は山ほどあると主張する。現実は逆だ。FRBに残された手段は、古臭いか弱いか、その両方でしかない。
FRBが11月にやろうとしているのはおそらく、長期国債を大量に追加購入して長期金利を引き下げることだ。FRBは金融危機を受けて08年秋以降、1兆7250億ドルもの住宅ローン担保証券や米国債などを購入している。バーナンキはこれが景気回復に「重要な貢献を果たした」と言ってきた。
だが実のところ、これといった効果はなかった。FRBの試算でも、10年物米国債の利回りが0・6ポイント下がったかもしれない、という程度だ。
11月に追加緩和を行った場合の金利引き下げ効果はさらに小さいかもしれない。期間30年の住宅ローン金利が年率約4・3%と、既にかなりの低水準になっているからだ。国債購入の規模も、前回よりは少ないだろう。5000億〜1兆ドル程度という予想が多い。
バンク・オブ・アメリカのエコノミスト数人に聞くと、追加購入は「経済にはそこそこの影響しかないだろう」としつつも「何もしないよりはまし」と言う。