アルカイダの新たな標的は欧州じゃない
「(シディキは)イスラム過激派の間でロックスター顔負けの人気者になっている」と、前出の友人は言う。「アメリカが『対イスラム戦争』に乗り出している新たな証拠と見なされている。アメリカはとうとうイスラム女性まで攻撃し始めたというわけだ」
米当局の想定外だったNYテロ未遂
アメリカ本土にテロの脅威が差し迫っている最も顕著な証拠は、この5月にニューヨークのタイムズスクエアで起きた自動車爆弾テロ未遂事件だ。実行犯のファイサル・シャザドをテロリストとして訓練したのは、パキスタンで活動するタリバンの一派。アメリカの情報機関は、タリバンが地元を遠く離れたアメリカでこれほど大胆な行動に出るとはまったく想定していなかった(シャザドは10月初めにアメリカの裁判所で終身刑を言い渡された)。
この1年で大きく注目されるようになったアルカイダ系の新しいリーダーたちも何人かいる。シャザドをタイムズスクエアに送り込んだパキスタン・タリバン運動の指導者ハキムラ・メフスードや、09年12月のクリスマスに起きた旅客機爆破テロ未遂の糸を引いたとされるイエメンのイスラム過激派指導者アンワル・アル・アウラキなどは、よく知られている。
パキスタンを拠点に活動しているイリヤス・カシミリは、知名度こそ劣るが、危険性ではメフスードやアウラキに負けていない。インドで数々のテロを実行したことで知られるカシミリは、ヨーロッパの都市で同時爆破テロを実行する計画に関わっているとされる。イギリスのデイリー・テレグラフ紙が先頃報じたところによれば、カシミリはイギリスとドイツに既に工作員のチームを送り込んでいると仲間に語ったという。
しかし、カシミリの最大の標的はヨーロッパではない。「最大の戦いは大サタンとの戦い」だと、09年にカシミリはパキスタンのジャーナリストに語っている。本命はあくまでもアメリカ----その事実は、9・11テロから9年あまりが過ぎた今も変わっていないようだ。