彼女が結婚しない理由
アラフォー世代が結婚できないのはフェミニズムが自己主張を教えたからではない
映画『恋人たちの予感』(89年)で主人公のハリーは、シェルドンなんて男は素敵な恋人になり得ないと言い張る。「そりゃ、シェルドンなら税金の申告はできる」と、ハリーは言う。「虫歯の治療も、シェルドンなら大丈夫。でもベッドでは下手くそだぞ」
そんな男はお断り、と思うだろうか。ローリ・ゴットリーブ(42)もかつてはそう思ったらしい。彼女の新著『彼と結婚しなさい──ミスター無難と身を固める理由』によれば、彼女は相手が「おたくっぽい」名前だという理由だけでデートをためらった。おまけに彼は1年前に離婚したばかりでスポーツ好き、ブロンクス生まれ。彼女には、「きっとビール缶を握りつぶすような男」に思えたとか。
ひどい言い草だ。この男が「げっぷはしない、汚い言葉も使わない」、おまけに一流大学の出身と聞いても、彼女は気が進まない。そしてそのうち、このミスター「シェルドン」はほかの女性とできてしまった......。
この出来事でゴットリーブは考え直した。そして本書ではこう説く。多くの女性が愛を見つけられない理由は(自分がそうだったように)表面的なあら探しばかりしているからだ、と。
結婚は非営利的な仕事
未婚の母であるゴットリーブが08年に、女は素敵な恋など求めず、息が臭いといった欠点のある男でも受け入れるべきだという記事を雑誌に書いたときは、かなりの物議を醸した。さもないと女は独りぼっちになり、育児という長く困難な仕事を手伝わせる人をゲットできないと彼女は論じ、結婚は「情熱の祝祭」ではなく、「退屈で非営利的な仕事」だとした。
ゴットリーブは今度の著書でも、夢見た愛を見つけられず、孤独に陥った女性の例として自分自身の体験を書いている。ゴットリーブの悲しみは、過去に例のないほど結婚を遅らせて、子供を持つ可能性を危険にさらし、母親の世代が想像もしなかった方法で家族を持とうと必死になっているこの世代の不運な人々の嘆きでもある。
私の友人にも、1人で母親になろうと悪戦苦闘している女性がいる。精子を買い、体外受精を申し込み、卵子を冷凍したりだ。
しかし、子供に父親を与えるためには我慢して平凡な男との結婚生活に落ち着くべきだというアドバイスは理不尽極まる。男にとっても大いなる侮辱だろう。
ゴットリーブは誰を非難しているのか。「こう言うと嫌われることは分かっている」と、彼女は書く。「でもフェミニズムは完全に私の異性関係を駄目にした」
なぜ彼女が嫌われるのか。彼女の主張が不当だからだ。フェミニズムは大きな社会運動であり、そのへんの自己啓発本とは違う。男に関する自分の愚かな判断をフェミニズムのせいにはできない。
ゴットリーブからすれば、問題は女性がすべてを手に入れることができると教えられたことだ。デートも含め、生活のあらゆる面で妥協するなと言われた女性はうるさく主張し始め、「自分の人生を支配できるようになったが、結婚できなくなった」という。
頭が痛くなるほどゆがんだ考えだ。第1に、女性が期待し過ぎているという証拠は裏付けに乏しい。確かにえり好みが激し過ぎる女性はいるかもしれない。
でもゴットリーブが書くように、ブラッド・ピット似の何千万謖も稼ぐ魅力的な男としかデートしないなら、それは若過ぎるか愚かだからだ。私たちの多くはただ愛し、愛されたいのだ。