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アメリカ政治

それでも医療保険改革は大丈夫!

2010年1月21日(木)17時25分
ジョナサン・オルター(本誌コラムニスト)

 もっとも、医療保険改革を潰しても、彼らにメリットはない。いったん賛成票を投じた者は、秋の中間選挙で「税金を使いまくるリベラル派」として非難されるのは避けられない。かといって、今から法案に反対しても、「税金を使いまくるリベラル派から寝返った」として、一段と厳しい非難を浴びるだけだ。

 法案が通れば、オバマと民主党は共和党に対して少なくとも一定の攻撃はできる。保険料の高騰や、特定価格帯では処方薬代が突然自己負担になって保険適用の「穴」に落ちる「ドーナツの穴」現象、そして医療費による家計破綻に直面している労働者を共和党はどう考えるのか。こうした問題を無視してまで保険会社の味方をするのか、と批判できるのだ。

 つまり、民主党の下院議員にとって法案を潰すという選択肢はない。少しでも常識のある議員なら、上院案に賛成票を投じるはずだ。しかも上院案は、昨年11月に支持した下院案よりずっと彼らの希望に近い内容だ。

 ネックとなるのは、そうした常識をもち合わせていない議員の存在だ。一部には、補選で敗れたコークリーに匹敵するほど空気の読めない議員もいる。

 一方、リベラル派の民主党下院議員は、大統領の法案署名にこぎつけるには上院案をまる飲みするしかないという嬉しくない状況に追い込まれる。だが彼らが忘れてはならないのは、受け入れがたい上院案でさえ現状と比べれば1000倍マシだということ。上院への怒りのせいで、分別を失ってはいけない。

怒りの対象は医療改革ではなくウォール街

 共和党は、今回の選挙結果は「医療保険改革反対」という有権者のメッセージだと主張するだろう。この難局を何とか切り抜けるために、大統領と議会指導者はそうした主張に怯むことなく、マサチューセッツ州の有権者の怒りを受け入れる必要がある。

 実際、有権者が命じたのは、ウォール街の高額報酬に対する厳しい対処のはずだ。世論調査によれば、オバマ政権のウォール街への甘い対応が、無党派層離れの大きな要因となっている。

 有権者は今後も民主党に背を向け続けるのだろうか。政界ではよくあることとはいえ、現状を見て遠い未来のことを推測すべきではない。民主党は11月の中間選挙で共和党の反撃に苦しむだろうが、有権者の離反がどの程度深刻かを推測するのはあまりに時期尚早だ。

 オバマは1年の大半を、議会対策ではなく中間選挙向けの態勢で過ごすつもりだ。それは、大事なことだろう。そして、政府にはアメリカ国民に大きなプレゼントをする力が今もあると証明することも、同じくらい大切だ。

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