底値のウッズ株は今が「買い」か
10億ドルプレーヤーからスキャンダルの帝王へ。地に落ちたウッズの市場価値と来るべき「復活劇」について、スポーツビジネスの専門家が解説する
さらば栄光の日々 アクセンチュア社はウッズとのスポンサー契約解除を発表した(写真は07年2月) John Gress-Reuters
スポーツ用品大手のナイキが男子プロゴルフのタイガー・ウッズとのスポンサー契約継続を発表する一方で、ITコンサルタント会社アクセンチュアが契約打ち切りを決めた。新たなスポンサー契約に名乗りを上げる企業は1社もない。元専属医師がステロイド処方の疑いで調査対象になったとも報道され、ウッズの名声と市場価値はまさにどん底まで落ちた。
現在、企業はウッズとスポンサー契約を交わすのを避けるべき時期なのか。かつて100人以上のスポーツ選手の代理人として広告出演交渉に当たったニューヨーク大学のボブ・ボーランド教授(スポーツ経営学)に本誌セーラ・ボールが話を聞いた。
----タイガー・ウッズの投資評価は「バイ(買い)」か「ホールド(保留)」か「セル(売り)」か。
今は「保留」だろう。ウッズと長期契約を交わしている場合は、復帰する際に生まれる莫大な価値を見込める。ウッズを手放そうと考えている企業と契約継続を考えている企業があるが、企業は契約期間の長さで2つのカテゴリーに分けられる。
長期の場合、契約解除による損失は契約解除で得られる利益より大きい。(スイスの大手時計メーカー)タグ・ホイヤーが契約継続を決めた理由の1つはこの点だろう。私が聞いたところにでは、同社とウッズの契約は6年。もう少し様子を見て今後どうなるかを見極められるという意味で同社は有利だ。アクセンチュアは1年だったと聞いているが、もし契約が短期ならいま手を切ったほうが得だろう。
----ウッズの復帰が確実になれば彼は「買い」になるのか。
私なら復帰の可能性にさらなる信憑性を求める。現時点でウッズの代理人と交渉を始めるかもしれない。
----そもそもどういった「身体検査」を行っているのか。ウッズの女遊びはPGA(米プロゴルフ協会)ツアーでは公然の秘密だったという報道が正しいなら、誰かが義務を怠ったとしか思えない。
「身体検査」が役に立つのは、今のように選手のあら探しをしているときだけ。本気で「検査」したら、どんな選手にも買い手はつかない。スキャンダルの可能性は常にある。「検査」にあれこれ言い出したら、誰も現役の選手と契約できなくなる。
私は大学の同僚と一緒に、スタジアムの命名権ビジネスがすたれた理由についてのコラムを書いたが、そのなかで今後は既に他界した永遠の名声を有する人物の名前が付けられるだろうと予想した。黒人初の大リーガーであるジャッキー・ロビンソンやNFLの名将トム・ランドリー、黒人テニス選手のアーサー・アッシュなどだ。私たちはタイガー・ウッズも彼らの仲間入りを果たすだろうと考えていたが、実際の彼は34歳の1人の人間に過ぎなかった。
----ウッズは最近、史上初の10億ドルプレーヤーの称号を得たばかりだったが、その収入の多くはスポンサー契約によるものだった。彼が今後の人生で再びこの栄光をつかむことはできるだろうか。
10億ドルレベルに登りつめることは二度とできない。それは本人も自覚しているだろう。騒ぎで傷付いたのは彼自身の稼ぎよりむしろPGAツアーだ。スポーツとゴルフに流れるカネを損なってしまった。PGAツアーはすでに『二都物語』と化している。つまりウッズがプレーしたツアーと、プレーしなかったツアーについての物語だ。
スポンサーは4つのメジャートーナメントとその他1つか2つを除く大会から手を引き、残りは中止になるだろう。今後1、2年間は不況を理由にこれまでスポーツ界に投じてきた資金を出し渋るようになる。