最新記事

スポーツ

底値のウッズ株は今が「買い」か

10億ドルプレーヤーからスキャンダルの帝王へ。地に落ちたウッズの市場価値と来るべき「復活劇」について、スポーツビジネスの専門家が解説する

2009年12月18日(金)17時21分
セーラ・ボール

さらば栄光の日々 アクセンチュア社はウッズとのスポンサー契約解除を発表した(写真は07年2月) John Gress-Reuters

 スポーツ用品大手のナイキが男子プロゴルフのタイガー・ウッズとのスポンサー契約継続を発表する一方で、ITコンサルタント会社アクセンチュアが契約打ち切りを決めた。新たなスポンサー契約に名乗りを上げる企業は1社もない。元専属医師がステロイド処方の疑いで調査対象になったとも報道され、ウッズの名声と市場価値はまさにどん底まで落ちた。

 現在、企業はウッズとスポンサー契約を交わすのを避けるべき時期なのか。かつて100人以上のスポーツ選手の代理人として広告出演交渉に当たったニューヨーク大学のボブ・ボーランド教授(スポーツ経営学)に本誌セーラ・ボールが話を聞いた。


----タイガー・ウッズの投資評価は「バイ(買い)」か「ホールド(保留)」か「セル(売り)」か。

 今は「保留」だろう。ウッズと長期契約を交わしている場合は、復帰する際に生まれる莫大な価値を見込める。ウッズを手放そうと考えている企業と契約継続を考えている企業があるが、企業は契約期間の長さで2つのカテゴリーに分けられる。

 長期の場合、契約解除による損失は契約解除で得られる利益より大きい。(スイスの大手時計メーカー)タグ・ホイヤーが契約継続を決めた理由の1つはこの点だろう。私が聞いたところにでは、同社とウッズの契約は6年。もう少し様子を見て今後どうなるかを見極められるという意味で同社は有利だ。アクセンチュアは1年だったと聞いているが、もし契約が短期ならいま手を切ったほうが得だろう。

----ウッズの復帰が確実になれば彼は「買い」になるのか。

 私なら復帰の可能性にさらなる信憑性を求める。現時点でウッズの代理人と交渉を始めるかもしれない。

----そもそもどういった「身体検査」を行っているのか。ウッズの女遊びはPGA(米プロゴルフ協会)ツアーでは公然の秘密だったという報道が正しいなら、誰かが義務を怠ったとしか思えない。

「身体検査」が役に立つのは、今のように選手のあら探しをしているときだけ。本気で「検査」したら、どんな選手にも買い手はつかない。スキャンダルの可能性は常にある。「検査」にあれこれ言い出したら、誰も現役の選手と契約できなくなる。

 私は大学の同僚と一緒に、スタジアムの命名権ビジネスがすたれた理由についてのコラムを書いたが、そのなかで今後は既に他界した永遠の名声を有する人物の名前が付けられるだろうと予想した。黒人初の大リーガーであるジャッキー・ロビンソンやNFLの名将トム・ランドリー、黒人テニス選手のアーサー・アッシュなどだ。私たちはタイガー・ウッズも彼らの仲間入りを果たすだろうと考えていたが、実際の彼は34歳の1人の人間に過ぎなかった。

----ウッズは最近、史上初の10億ドルプレーヤーの称号を得たばかりだったが、その収入の多くはスポンサー契約によるものだった。彼が今後の人生で再びこの栄光をつかむことはできるだろうか。

 10億ドルレベルに登りつめることは二度とできない。それは本人も自覚しているだろう。騒ぎで傷付いたのは彼自身の稼ぎよりむしろPGAツアーだ。スポーツとゴルフに流れるカネを損なってしまった。PGAツアーはすでに『二都物語』と化している。つまりウッズがプレーしたツアーと、プレーしなかったツアーについての物語だ。

 スポンサーは4つのメジャートーナメントとその他1つか2つを除く大会から手を引き、残りは中止になるだろう。今後1、2年間は不況を理由にこれまでスポーツ界に投じてきた資金を出し渋るようになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中