最新記事

米外交

東京宣言で露呈したオバマの貿易オンチ

東京演説でアジアの重要性を強調したが、アジア外交のカギを握る貿易についてはお茶を濁すことしかできなかった 

2009年11月17日(火)18時40分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学国際政治学教授)

期待外れ アジアでリーダーシップを発揮すると約束したオバマだが(写真は16日の上海での対話集会) Jason Reed-Reuters

 遅ればせながら、バラク・オバマ米大統領が東京で行ったアジア政策に関する演説について思うところを2つ、述べてみたい。


■オバマの選挙顧問も務めたある気鋭の外交ウォッチャーが、オバマ政権のこれまでの外交政策に関する言葉の使い方で、興味深い洞察をしている。オバマ政権は、「同盟」という言葉より圧倒的に多く「協調」という言葉を使ってきたというのだ。

 これはオバマが敵対国との対話や大国同士の協調体制を築くことに力を入れていることを考えれば、それ程意外なことではない。とはいえ、敵対国より同盟国に呼びかけることの方が大切な時もある。

 東京での演説はその一例だ。その点、オバマが「協調」9回に対し「同盟」を12回使ったのは喜ばしいことだ。これはおそらく何よりも環太平洋地域の政情を物語っているが、同時にオバマ政権が同地域の微妙な関係に気を配っていることを示している。

■とは言うものの、演説の貿易政策に関する部分は期待はずれだった。一部では、ブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドで作る「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」に参加を表明した、という報道もあった。TPAはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を舞台とした経済連携構想で、オーストラリアやベトナムも参加に向けた予備協議を行っている。

 ところが、オバマの実際に演説で言ったことは以下の通りだ。


 米国はまた、広範にわたる締約国が参加し、21世紀の貿易合意に相応しい高い基準を備えた地域合意を形成するという目的をもって、TPP諸国と関与してゆきます。


 これは何を意味するのか。 ニューヨークタイムズのへレイン・クーパーはその曖昧さを指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月住宅着工戸数は前年比マイナス2.5%、8カ月

ビジネス

みずほ証の10ー12月期、純利益は4.4倍 債券や

ビジネス

アングル:中銀デジタル通貨、トランプ氏禁止令で中国

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中