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アメリカ社会

結婚を阻むワシントンのアパルトヘイト

2009年10月21日(水)16時25分
ケイティ・コノリー(ワシントン支局)

読み書きのできない人が37%

   もっとも、ワシントンにおける白人の割合はわずか3分の1程度。一方、人口の56%を占めるアフリカ系アメリカ人の婚姻率も1960年代以降、下落の一途をたどっている。1950年には、アフリカ系女性の62%が結婚していたが、最新の国勢調査ではわずか36%。同時期の白人女性の婚姻率も下落傾向にあるものの、66%から57%に下がっただけだ。

 ワシントンに住むアフリカ系アメリカ人の大半は低収入か失業中。どちらも、婚姻率の低さと離婚率の高さにつながりやすい要因だ。

 最後に、ワシントンは一流の大学やシンクタンクを擁する町だが、日常生活に必要な読み書き能力のない人が37%に達するという驚くべき実態がある(全米平均より約15ポイント高い)。識字率と貧困が強い相関関係にあることは言うまでもない。

 また、貧困地域で婚姻率が低下することを示す研究も多数ある。たとえばハーバード大学経営大学院のキャサリン・エデン教授の研究は、貧しい女性ほど結婚前に妊娠しやすい傾向を見事に示している。
 
 同性愛者の結婚が認められれば、ワシントンの婚姻率が上昇するだろうというヘスの指摘は正しい。だが、それだけではアフリカ系アメリカ人社会における貧困と文盲という難題は置き去りにされたままだ。社会に無視されてきた人々の問題から目を背けるのはもう止めるべきだ。

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