結婚を阻むワシントンのアパルトヘイト
首都ワシントンの婚姻率が全米平均を大きく下回る背景には人種と階級の根深い断絶がある
春が来ない街 リベラルな白人エリートにも貧困に苦しむマイノリティーにも結婚できない事情がある Kevin Lamarque-Reuters
セックスとジェンダーの問題に詳しいブロガーのアマンダ・ヘスが10月19日、ワシントン・シティー・ペーパー紙のサイトで興味深い話題を取り上げた。テーマは、アメリカ人の結婚に関するピュー・リサーチセンターの最新研究だ。
首都ワシントンの婚姻率はアメリカ国内で最低を記録している。全米平均では女性の婚姻率は48%、男性は52%だが、ワシントンでは女性の23%、男性の28%しか結婚していない。ほかの州と比べて際立って低いため、各州の婚姻率の高低を四色で分類した地図でも、ワシントンだけ色が塗られていないほどだ。ワシントンに次いで婚姻率が低いのは女性がロード・アイランド州、男性がアラスカ州だが、そこでもそれぞれ女性の43%、男性の47%が結婚している。
ヘスは主な理由として2つの要素を挙げている。まず、ワシントン市民の初婚年齢が高い点。さらに、同性婚が認められていない影響で、8.2%いる性的マイノリティーの存在が統計を歪めているという。
外からは見えないマイノリティー
どちらももっともな説明だが、データの分析が不十分だ。そもそも、ワシントンは州ではなく市に近いので、他州の人口統計と単純に比較するのは難しい。それでも、今回の調査結果はワシントンにおける人種と階級の深層を浮き彫りにするものだ。
ワシントンの住人なら誰でも、この町の恥ずべき秘密に気がついている。ここでは、不文律のアパルトヘイト(人種隔離政策)が行われているのだ。
高収入の大卒の白人が暮らすのは北西地区。彼らが求めるサービスを提供するのは移民やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系など底辺層の市民で、北西地区以外の3つの地域に暮らしている。高級ホテルやレストラン、観光スポットにしか用がない観光客はまず訪れることのないエリアだ。
北西地区の住民は概して、初婚年齢が平均より高い。ピュー・リサーチセンターの研究では、大卒者の割合が高い地域ほど晩婚の傾向があるという。専門職の女性も初婚年齢が高めだ。
ワシントンでは、ホワイトカラーの大半は政府や行政関連の仕事に就いている。そうした職種には左寄りの進歩的な思想の持ち主が多く、彼らは晩婚を選びがちだ。
実際、ピュー・リサーチセンターの調査では、民主党の得票数が多い州ほど晩婚であるという相関関係も明らかになっている。その点、ワシントンは民主党が圧倒的に強い。昨年の大統領選でのバラク・オバマの得票率はなんと92%。2004年にはジョン・ケリーが89%、2000年にはアル・ゴアが85%を獲得している。