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米英に迫る「熟年離婚」の危機

2009年10月8日(木)17時18分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

「イギリス軽視」はすでに始まっている?

 イギリスのナイジェル・シェインワルド駐米大使が外務省の同僚たちから、米政府内の誰がイギリスを担当しているのかと質問されたときのこと。彼は冗談めかして、彼らにとって最重要課題でないらしいからわからないと答えた。

 これはもちろん、英米関係が順調で、緊急に注目すべき問題がないためだ。しかしキャメロンが権力を握り、現在ほのめかしているような政策を実行する日が来たら、シェインワルドの後任は今以上にアメリカに無視されていると感じることになるだろう。ゴードン・ブラウン英首相は国連総会の際にオバマとの会談を求めて5回も要請を行う羽目になったが、そんなアメリカの対応さえ温かく見えるほど、キャメロン政権は冷遇される可能性が高い。

 アメリカとイギリスには歴史的、文化的に強い絆があり、他国とは違う特別な関係は今後もずっと続くだろう。だがアメリカ側に感情に左右されないポストモダンの大統領が誕生し、彼と次期英首相の本命候補の関係が冷え込んでいる以上、米英の特別な関係はこれまでほど特別ではなくなる可能性は十分にある。

<追記>
 シェインワルド駐米大使が、イギリスはオバマ政権に重視されていないという趣旨のジョークをいったという記述について、英大使館から即日連絡があった。一部を引用しよう。

「大使がそうした発言をしたという記述について、断固として否定する。たとえ冗談でも、そのような発言はしていない。熱病に冒された評論家たちがなんと騒ごうと、英米関係は従来どおり緊密だというのがわれわれの考えだ」

「熱病に冒された評論家」という表現は個人攻撃に聞こえるが、私は昨日インフルエンザの予防接種を受けたばかりなので、私のことではないはずだ。
 

Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog, 08/10/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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