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前米副大統領

「拷問の番人」チェイニーの暴走

2009年9月7日(月)17時51分
ジョナサン・オルター(本誌コラムニスト)

オバマはどう対抗すべきか

 そうだとしても、私自身はCIAの尋問方法について特別検察官を任命するホルダーの考えに賛同できない。「オバマ・アジェンダ(重要な政治課題)から外れる」からではない。これが中身のない、うわべだけの問題だからだ。指名されたジョン・ダラム連邦検事は、イラクのアブグレイブ刑務所の何人かの熱心なCIA取調官をスケープゴートにせざるをえないだろう。私はチェイニーが宣誓に違反したとして投獄される姿が見たいが、そうなれば悪い前例になる。

 かつてジェラルド・フォード元大統領がリチャード・ニクソン元大統領を恩赦したのは正しかった。必要なのは、拷問についての情報の完全な公表と、嘆かわしい失敗を公式に認めることだ。政治的な思惑に基づく訴追だと簡単に疑念をもたれてはならない。保守派の論客であるグローバー・ノークイストは、共和党が次に政権を取ったとき民主党の犯罪的な景気刺激策を訴追できるから、ホルダーの決定を支持すると言う。愉快な話だ。

 オバマはこの問題のすべてが消え去るのを望んでいる。大統領選の間、オバマは彼の政権の司法長官は彼自身でなく、人々のために奉仕する弁護士になると約束した。だからオバマはホルダーの決定に従うしかないと思っている。

 だが、それは違う。拷問に関する包括的な報告を作成する特別委員会をつくってもまだ遅くない。もし特別委員会が起訴を勧めるなら、チェイニーにとってホルダー以上の「抵抗勢力」になるだろう。

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