「北極牙街道」の謎...バイキング時代の交易と「北米先住民との出会い」
Vikings Beat Columbus
バイキングと北米北極圏の先住民はセイウチの牙を取引していた可能性が KEN CANNING/ISTOCK
<セイウチの牙取引のため北欧から6000キロを旅して北米北極圏まで渡っていたと示唆する新研究が>
北極圏でセイウチの牙を探していたバイキング時代の北欧人は、コロンブスがアメリカ大陸を「発見」する何百年も前に北米の先住民と出会っていた──。そんな可能性を示唆する研究が、新たに発表された。
セイウチの牙は中世ヨーロッパで珍重されていた。北欧人は牙を求めて北大西洋を横断し、その過程でアイスランドやグリーンランドに集落を築いた。
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だが取引された牙がどこで調達されたのか、正確な場所は不明だった。9月末に学術誌サイエンス・アドバンシズに掲載された論文は、グリーンランドの北欧人入植地からヨーロッパに輸入されたセイウチの牙が、非常に離れた北極圏の高緯度の狩猟地で採集されたことを示している。
研究チームは高解像度の遺伝子解析技術を使い、牙が取引されたのは高緯度の北極圏にある狩猟地だと特定した。これらの地域は、バイキング時代の北欧人が居住し、牙採集を行っていたと考えられる場所よりもはるかに北だ。
バイキング時代とは8世紀末から11世紀にかけて、現在バイキングの名で知られる北欧人がヨーロッパ全域や世界のほかの場所で略奪や交易、植民地化を行った時期だ。論文の執筆者らによれば今回の研究は、北欧人が北米北極圏の先住民と交流しただけでなく、牙の取引を行っていた可能性も示すという。