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「北極牙街道」の謎...バイキング時代の交易と「北米先住民との出会い」

Vikings Beat Columbus

2024年11月14日(木)17時50分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)

Early interactions between Europeans and Indigenous North Americans revealed

「バイキングとセイウチの牙取引については10年ほど前から強い関心が寄せられていたが、その視点はヨーロッパ寄りの思考に凝り固まっていた。私たちは遠く離れた北極圏の狩猟地で何が起きていたのか、特にその牙が採集された場所で何が起きていたかを知りたかった」と、ルンド大学(スウェーデン)の考古学・古代史学科教授でこの論文の筆頭執筆者であるピーター・ジョーダンは言う。

北欧人が北極圏の辺ぴな地域に行ったとき、おそらくほかの文化に触れて交易を行ったのだろう。現在のカナダやグリーンランドに住むイヌイットの祖先であるトゥーレ人とも交易したと考えられる。


「北極牙街道」に注目

北欧人と北米先住民の遭遇の可能性は以前から指摘されていたが、考古学的な裏付けが曖昧だった。だが今回の研究では、牙は北欧人とトゥーレ人が活動していた辺境の地からもたらされていたため、両者は同じ時期に同じ場所にいた可能性がある。直接接触したという決定的な証拠ではないものの、セイウチの牙を探す過程で出会っていたことを示唆している。

バイキング時代のグローバル化に関する研究は、西アジアからヨーロッパに入る宝物に焦点を当てがちで、多くの場合はシルクロードを経由する物を取り上げている。だが今回の研究は、15世紀に植民地化の時代が始まるはるか前から、北米とヨーロッパの交易網を結ぶ「北極牙街道」があったことを示唆している。

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