8日間のはずが8カ月に...宇宙飛行士の「足止め騒動」で見えた「老舗とベンチャー」の明暗とは?
Stuck in Space
ISS滞在8日目を迎えたウィルモア(左)とウィリアムズ(6月13日) JSC/NASA
<ボーイングの宇宙船スターライナーで国際宇宙ステーションに到着するも、「足止め」されている2人の宇宙飛行士。帰りはイーロン・マスクの「スペースX」を頼ることになったが──>
6月5日に打ち上げられた米航空機大手ボーイングの宇宙船スターライナーで国際宇宙ステーション(ISS)に到着した宇宙飛行士2人が足止めされている問題で、NASAは彼らを来年2月に帰還させると発表した。
スニタ・ウィリアムズとバリー・ウィルモアは当初、6月14日頃に地球に帰還する予定だった。だが宇宙船にヘリウム漏れが見つかり、さらにスラスター(推進装置)の一部が故障。原因究明のため帰還は再三延期されていた。
NASAのビル・ネルソン長官は8月24日の記者会見で、2人の帰還にはスターライナーではなく、イーロン・マスク率いる宇宙ベンチャー、スペースXの有人飛行ミッション「クルー9」を使用すると発表した(スターライナーは9月7日に無人で帰還した)。
ネルソンはさらに「われわれは過去に過ちを犯した。情報を上げにくい体質が災いし2機のスペースシャトルを失った」と語った。「宇宙飛行は最も安全で最も日常的なものでもリスクを伴う。試験飛行はそもそも安全でも日常的でもない」
当初の滞在予定を延長し、「2人をISSに残してボーイングのスターライナーを無人で帰還させる決定は安全性を重視した結果だ」。
NASAのジム・フリー副長官も同じ意見だ。「私たちは学習する組織だ。今回の取り組みにも学ぶところがあるはずだ。決定は容易ではなかったが、間違いなく正しい」
「安全確保」に一致協力
スターライナーのトラブルを受けて、NASAは次のISSのミッションを延期し、宇宙船をISSにドッキングしたまま原因究明に努めてきた。スターライナーの「スラスターの問題は非常に複雑だ。帰還時に正常に動作するか、温度がどのくらい上昇するか、予測は難しい」と、NASAの商業乗組員プログラム責任者であるスティーブ・スティッチは語った。
ボーイングは「今後もボーイングは乗員と宇宙船の安全に注力する」と説明した。「NASAの決定どおりミッションを遂行し、宇宙船の無人帰還を安全かつ成功裏に実現する準備を進めている」
一方、スペースXのグウィン・ショットウェル社長兼COOは8月24日、「できる限りNASAをサポートする用意がある」とX(旧ツイッター)に投稿した。