最新記事
地球温暖化

温暖化が原因で「1日の長さ」が伸びる!?...「地球の自転」に気候変動が及ぼす思わぬ影響とは?

Rising Seas and Longer Days

2024年8月29日(木)15時29分
ジェス・トムソン(科学担当)
流氷に乗るホッキョクグマ

北極や南極の氷が大量に溶け出すと、地球の自転の速度が遅くなる SEBNEM COSKUNーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

<北極や南極の氷が溶けて大量の水が赤道付近に移動する結果、地球の自転にブレーキが。うるう秒の運用にも問題発生──【最新研究】>

気候変動が実にさまざまな面で地球に大きな影響を及ぼしていることは、よく知られている。例えば、気候変動は強力なハリケーンや深刻な干ばつ、外来種の増加や海洋の酸性化を引き起こす。

しかし、最新の研究によると、ほかにも思いも寄らない(もしかすると、あなたが聞いたことがない)影響があるのかもしれない。


先頃、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によれば、気候変動の影響で地球の1日が少しずつ長くなっている可能性がある。それは、地球温暖化により北極と南極の氷が溶け、海面が上昇している結果だという。

「今日の気候変動は、歴史上前例のない規模で進んでいる。ここ数十年、気候変動により氷河と氷床の融解が加速し、海水面が上昇してきた」と、この論文の著者であるスイス連邦工科大学チューリヒ校のモスタファ・キアニ・シャフバンディらは記している。

「その結果、両極地方から赤道地帯へ海水が大量に移動し、地球がより扁平型になり、その影響で地球の1日の長さが長くなっている」

地球の赤道付近が太くなると、その形状が原因で自転の速度が減速し、1日の長さが長くなるのだ。

「うるう秒」も延期に?

地球の1日の長さは、およそ8万6400秒。シャフバンディらの論文によると、1日の長さは、月の引力の影響により、これまでも長い時間をかけて少しずつ延びてきた。

月の引力によって潮の満ち引きが起こり、大量の海水が移動することで、海水と海底の間に摩擦が生じ、地球の自転にブレーキがかかるためだ。

この研究によると、両極地方から赤道地帯への海水の移動により、20世紀の100年間で1日の長さは0.3~1.0ミリ秒延びた(1ミリ秒=1000分の1秒)。

ところが、2000年以降、この原因により1日の長さが延びるペースは、100年当たり1.33ミリ秒±0.03ミリ秒に上昇しているという。南極は年間平均約1500億トンの氷を失っており、グリーンランドの氷冠も年間平均約2700億トン減っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー軍事政権と反軍勢力、停戦延長の意向=マレ

ビジネス

ベインキャピタル、ジャムコのTOBを21日に開始

ビジネス

日経平均は続伸、日米交渉通過で安心感 海外休場のた

ワールド

ウクライナ第2の都市にミサイル攻撃、1人死亡・57
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中