【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中
THE REAL SAM ALTMAN
実はシリコンバレーで一番の野心家とも言われるサム・アルトマン JIM WILSONーTHE NEW YORK TIMESーREDUX/AFLO
<生い立ち、家族との確執、頭の中......。素顔を追って見えてきたサム・アルトマンの二面性>
昨年春のある日、オープンAIのサム・アルトマンCEO(38)は、シリコンバレーで絶大な人気を誇る瞑想指導者で僧侶のジャック・コーンフィールドと一緒に、サンフランシスコでイベントに登壇していた。叡智と最先端のテクノロジーの融合を目指す「ウィズダム2.0」という比較的地味なイベントだ。
アルトマンが顔を出すには場違いにも思える。司会者もそう感じたようだ。「どうして今日はここへ?」
「うん、まあ、そのー。今日の話題に興味があるのは間違いない」と、アルトマンは言った。この日の建前上のテーマは、マインドフルネスとAI(人工知能)だ。「でも、あのー、ジャックと出会えたことは、私にとって人生の大きな喜びの1つだ。ジャックと時間を過ごせるなら、どんな話題でも喜んで参加するよ」
このイベントの真の目的が見えてきたのは、コーンフィールドが挨拶の言葉を述べたときだった。「私の経験から言うと、サムは......奉仕型のリーダーという性格が強い」
そう、この日のコーンフィールドの役割は、アルトマンの人柄にお墨付きを与えることだった。いま多くの人の頭の中にある問いに答えようというわけだ。それは、アルトマンをどれくらい安全な人物だと思っていいのか、という問いである。
グレーのワッフル生地のヘンリーネックシャツを着た、このまだ若い男性は、AIが世界にどのような影響を及ぼすかを左右する存在に見える。それだけに、この問いはひときわ重要な意味を持つ。
コーンフィールドによれば、2人は数年来の知り合いで、一緒に瞑想をし、どうすれば「全ての生命への配慮」などの価値を生み出せるのかを語り合ってきたとのことだった。
コーンフィールドが話す間、アルトマンは足を組まず、背筋をピンと伸ばし、辛抱強そうな表情をつくって座っていた(もっとも、その表情を見る限り、本来あまり辛抱強い人物でないことは明らかだった)。
アルトマンは、人々がAIを恐れていることをよく分かっている。というよりも、恐れるべきだと思っている。そこで自分には、AIに関して人々の疑問に答える道徳上の義務があると考えているのだ。
なかなか見えない人物像
本人があちこちで披露している自己分析を総合すると、アルトマンは頭はいいが天才とまでは言えず、思い上がりを抱きやすく、やや型破りな面を持った「ITエリート男性」ということになりそうだ。