終末論に傾倒し、グーグルを警戒...オープンAIのアルトマンはどんな人物か、なぜCEOを解任されたか
スター経営者だったアルトマンの退任でオープンAIはどうなる? CARLOS BARRIAーREUTERS
<「チャットGPT」と「DALL・E2」を引っ提げ、AI革命を牽引してきたサム・アルトマン電撃解任の舞台裏>
対話型AI(人工知能)「チャットGPT」の開発で知られるオープンAIが11月17日、サム・アルトマンCEOの即時退任を発表した(取締役も退任)。事実上の解任とみられる。「正式な後継者」を探す間、当面ミラ・ムラティCTO(最高技術責任者)が職務を引き継ぐという。
(編集部注:退任発表後、投資家がオープンAIに対しアルトマンの復帰を働きかけているとの報道が出ている)
おそらくこの10年で最も有名で影響力のあるAI企業の衝撃的ニュースだ。同社が2022年後半にリリースしたチャットGPTと画像生成AI「DALL・E(ダリ)2」は、文字どおりAI革命を先頭に立って引っ張った。アルトマンはブームの「顔」として、記者や議員、世界中の指導者に自社とその魔法のような技術を解説してきた。
そもそもどんな人物?
アルトマンの半生は典型的なシリコンバレーの成功物語だ。2005年に19歳でスタンフォード大学を中退。位置情報共有ソーシャル・マッピング・サービス「ループト」を共同で設立し、この業界での地歩を固めた。
その後自身のベンチャーキャピタルを立ち上げて経験を積み、2014年にYコンビネーターの社長に就任。注目企業に投資する巨大ファンドの経営を担った。
さらに翌年、優秀な技術者を擁する非営利団体オープンAIの設立を発表。AIへの警戒を主張していたイーロン・マスクと共に共同会長に就き、大量の資金を投入した。2020年までにアルトマンはYコンビネーターから完全に離れ、オープンAIに集中し始めた。
ただし、AIは最大の関心事であると同時に、最大の恐怖でもあった。終末論に傾倒していたアルトマンは、いずれAIは自分で考えることを学び、人類文明を破壊しかねないと警告するテクノロジー界の思想家たちに影響を受けていた。
アルトマンは、グーグルなどの巨大企業にはAIを任せられないと考え、AIの暴走に歯止めをかける適切なガイドラインと規制を主張。そのモデルとして、オープンAIを成長させることを望んでいた。
退任の理由
同社取締役会の声明にはこうある。
「アルトマン氏の退任は、取締役会の熟慮を重ねた検討プロセスを経たものであり、同氏は取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直でなかったため、取締役会の責任遂行に支障を来したとの結論に達した。取締役会はもはやオープンAIのリーダーを続けるための同氏の能力を信頼できない」
同社幹部からもアルトマンからも具体的な話は出ていないが、その背景に何らかの問題があったと推察できる。