最新記事
AI

グーグルが敗北? ビッグテックが開いた「パンドラの箱」

BIG TECH IN TROUBLE

2023年6月15日(木)21時20分
ブルース・シュナイアー、ジム・ワルド

一方、オープンソース・コミュニティーはLLaMAのように公開されたLLMを使うことにより、家庭用コンピューターと一般的なデータセットで巨大LLMとほぼ同等の結果をもたらしてみせた。

大手企業にしかできなかったことを、好奇心とコーディング技術と、中価格帯のノートパソコンさえあれば誰でも試せるようになった。いわばAI技術の民主化だ。

大きいほうが有利かもしれないが、オープンソース・コミュニティーは小さくても十分戦えることを実証してきた。

おかげで、より効率的で、よりアクセスしやすく、よりリソースを食わないLLMへの道が開かれた。多くの人があれこれ実験できるようになるから、イノベーションも生まれやすくなる。

これはビッグテックによるAI支配を崩すことにもなる。多様な開発者や研究者、組織によるコラボレーションが進めば、より幅広い価値観を反映したAI開発が可能になる。

だが、オープンソースであるということは、そのテクノロジーが悪用されたとき、誰も責任を負わないことも意味する。

実際、インターネットを機能させる上で重要なオープンソース・テクノロジーに脆弱性が見つかったものの、その成り立ちが不透明なため、バグを修正する責任者が存在しないケースは多い。

また、オープンソース・コミュニティーは多くの国や文化をまたいで存在するため、特定の国の法規制が遵守されることは期待しにくい。

さらに、開発プロセスへの「自由参加」が可能になったということは、違法あるいは悪意の利用者もアクセスできることになる。

これは規制当局にとっても頭の痛い問題だ。オープンソース・コミュニティーは既存のLLMに手を加えるため、規制する手段は限られている。

研究開発の内容に制限を設ける通常のアメとムチは使えず、特定の用途のシステムを構築した場合に報酬を与えたり、ハッカソン(システム開発者らが集まり、集中的に開発を行うイベント)を開催して開発を方向づけたりと、魅力的なアメを考案することがカギとなるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中