グーグルが敗北? ビッグテックが開いた「パンドラの箱」
BIG TECH IN TROUBLE
グーグルが敗北する日が来る?
忘れていけないのは、オープンソース・コミュニティーが基本的には非営利であることだ。参加者は好奇心や実験意欲、あるいは単にものづくりが楽しいから集まってくることが多い。
リナックス(パソコンの基本ソフト)やアパッチ(ウェブサーバー用ソフト)などオープンソースで構築されたソフトを支援して利益を得る企業もあるが、開発コミュニティー自体は利益を追求しない。
こうしている間にも、多くのLLMがオープンソース・コミュニティーから生まれている。
少し前にリークされた、グーグルのあるエンジニアが上司に宛てたメモは、オープンソース・コミュニティーが既にビッグテックを追い抜き、圧倒的にリードしていると警告していた。
大手テクノロジー企業が、オープンソース・コミュニティーのパワーを真剣に受け止めなかったために窮地に陥った例は過去にもある。
マルチタスク・マルチユーザー用OS「UNIX」で圧倒的優位にあったサン・マイクロシステムズは、リナックスへの対応の遅れが命取りになった。
かつてウェブブラウザを支配していたネットスケープは、アパッチの脅威を理解していなかった。
オープンソース・コミュニティーはオリジナルのプログラムを生み出すのは苦手だが、何らかのコードを与えられると、たちまち圧倒的パワーを発揮する。そのときになってプログラムを引き揚げたいと思っても手遅れだ。
LLMの開発は民主化時代に突入した。小規模な開発プロジェクトでも成果を上げられることを示し、実験を可能にし、管理を分散化し、利益追求でないインセンティブを提供することで、オープンソース・コミュニティーはよりダイナミックでインクルーシブ(包摂的)なAI開発環境を生み出した。
もちろん、そこから生まれるモデルにバイアスがかかっていたり、バグが混じっていたりする可能性はある。虚偽情報を広めるなどの悪質な目的で使われる可能性もある。
ただ、それを管理するためには、ビッグテックへの規制とは全く異なるアプローチが必要だ。