ChatGPTにはまねできない? 今、学生に求められる「最も重要な力」とは
LEARNING TO LOVE CHATGPT
例えば、私の今夏のコース「大統領になる準備」の最終試験では、「成功した大統領は選挙運動をどう構成したのか、成功例を比較検討せよ」といったエッセーを書かせるつもりはない。代わりに次のような出題をする。
「『どうすれば大統領として成功できるかを考えるために、最も適切な質問は?』。このプロンプト(質問文)をチャットGPTに入力して1000ワードの回答を得る。そこにあなたのフィードバックと批評を添えて注釈を付ける。チャットGPTが生成した回答を読んで、あなたはどのように質問を微調整するか。その新しい質問をチャットGPTに入力して、得られた回答に再びあなたのフィードバックと批評による注釈を付けよ」
チャットGPTは伝統的な試験を無意味な遊びに変えたが、こうした新しいプロンプトは、学習と分析、カスタマイズ、実験に関して、私の従来のアプローチを進歩させている。私は今後、知識や事実を伝達するだけの講義は行わない。これからの授業は、学生の集合的な頭脳を連携させてパフォーマンスを発揮させることを軸に構成する。
例えば、大統領報道官の制度の発展について、まず基本的な資料を読ませ、事前に録画した講義を見せて(どちらもAIが作成することになるだろう)学生の知識の土台を整えた上で、現在の大統領報道官が翌日に対応することになりそうな質疑応答をシミュレーションする。そうしたライブのやりとりを中心とする授業を準備している。
チャットGPTは常に進化し変容しているから、私自身が研究分野の最先端にいようと努力させられることはもちろんだ。しかし、それ以上に重要なのは、「どうすれば学生に将来の準備をさせることができるか。彼らのパフォーマンスを高めるような演習をどのように開発できるか」を、私が考え続けることだ。
「質問する力」で競争優位を
授業に対する私の考え方や課題が変わることは、近年の最大の問題である学生のメンタルヘルスにも、既に有益な効果をもたらしている。
チャットGPTをエッセーの初稿や出発点として使うことが許され、むしろ要件とされるだけでも、膨大な知識のとてつもない総合体が開拓されるだけでなく、学生を心理的に勇気づけることができる。真っ白な画面で点滅するカーソルに怯える必要はない。質問を投げかければ、すぐに何かしら出てくる。