最新記事
AI

ChatGPTにはまねできない? 今、学生に求められる「最も重要な力」とは

LEARNING TO LOVE CHATGPT

2023年5月31日(水)13時10分
サム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授、本誌コラムニスト)

230606p27_POT_02.jpg

LEON NEAL/GETTY IMAGES

私が勤務する大学はチャットGPTについての公式なガイドラインをまだ発表していない。講義内容を充実させるため講師陣に助言を行う部署であるラーニングセンターが見解を出しているだけだ。同センターはAI(人工知能)の使用についてシラバスで学生たちに伝えることを検討するよう講師陣に奨励している。特に使用を禁止する場合はシラバスに明記するよう指示し、そのひな型も示している。

教育格差をなくすツールにも

とはいえ、同センターは使用禁止を勧めているわけではない。その見解の大部分を占めるのは授業でAIを活用する方法についての記述で、具体例や手順なども示されている。

わが校と同レベルの名門大学の状況も調べてみたが、どこも似たようなものだった。わが校のAI指針はペンシルベニア、プリンストン、エールなどアイビーリーグの私立名門校の指針と酷似している。これらの大学もわが校と同様、大学としての指針は示さず、ラーニングセンターのような部署が見解を出している。

それらの見解は総じて学生たちがチャットGPTにレポートを書かせるなど不正行為を行うことを警戒しているが、現状では学生たちのほうが大学当局に疑いの目を向けそうだ。AIについて独自指針を出すことに及び腰で、互いの見解をコピーし合っているのではないか、と。

一方で、私が同僚たちと長年議論してきた問題の解決にチャットGPTが役立つ可能性もある。その問題とは、アメリカの教育制度に内在する深刻な不公正だ。現状では裕福な家庭に生まれれば、私立のプレップスクール(大学進学準備校)に入れるなど名門大学への進学で格段に有利になる。だがチャットGPTはうまく使えば家庭教師や進学コンサルタント代わりになり、この不公正に風穴を開けられるかもしれない。

学生たちに知的刺激を与え、潜在的な能力を開花させることが私たち教授陣の務めだ。そのために今後は暗記力よりも高度な創造性や知的鋭敏さを重視し、個々の学生に合ったよりカスタマイズされたカリキュラムを提供する必要がある。

私の同僚にはシラバスも試験も何十年も変えていない人たちがいるが、それでは過去の試験問題が売買されるなど不正行為がはびこりかねない。チャットGPTの時代に評価の整合性を確保するためには、学生の特定の経験を用いるしかない全く新しいテストを作成する必要がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ製造業PMI、6月は5年ぶり低水準 米関税で

ワールド

米国は医薬品関税解決に前向き=アイルランド貿易相

ビジネス

財新・中国サービス部門PMI、6月は50.6 9カ

ワールド

気候変動対策と女性の地位向上に注力を、開発銀行トッ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中