完成目標はわずか5年後、中国が「究極のエネルギー」核融合発電に示す本気度
CHINA’S MEGA LAB
中国・安徽省にある核融合エネルギー実験装置「EAST」(2018年撮影) REUTERS
<2028年までに世界最大の核融合発電施設を目指す中国の計画だが、提示されたタイムテーブルはいささか楽観的すぎる>
中国で2028年までに核融合発電を目指す施設の建設計画が昨年、政府に承認された。
実現すれば、この施設は5000万アンペアの電力を生成する。いま世界最大の核融合炉はアメリカのサンディア国立研究所(ニューメキシコ州)が運営するZパルスパワー施設だが、中国が計画しているものはその約2倍の能力を持つことになる。
昨年9月に北京のシンクタンク「遠望智庫」が主催したオンライン会議でこの計画を発表したのは、中国を代表する核兵器開発の専門家で、中国工程物理研究院教授の彭先覚(ポン・シエンチュエ)だ。
彭によれば、計画中の施設では2種類の水素同位体(重水素と三重水素)に点火するために非常に強い電気を加えて、核融合反応を引き起こす。この過程で生まれる強いエネルギーと圧力が原子核を融合し、さらに強いエネルギーを生成して電力として送り出す。
「今日の世界で、核融合は科学技術の最高の宝だ」と、彭はオンライン会議で語った。
これまで世界中の科学者が、核融合エネルギーの実用化を目指して研究を続けてきた。核融合は実験室では確認されている。しかし核融合を起こしても、そのために投入した量を上回るエネルギーが生成されなくては意味がない。その初の成功例が昨年12月に報告されたが、エネルギーの「純増」と呼べるかは疑問だ。
核融合が「究極のエネルギー源」である理由
核融合は過酷な条件の下で原子核同士が結合し、より重い原子核に変わる現象だ。結合した後の原子核の質量は、結合前の原子核の質量の合計より軽くなっており、その差の分の質量がエネルギーに変わる。
もし科学者たちがいくつものハードルを乗り越えて核融合発電が実現すれば、原料をほぼ無尽蔵に調達でき、温室効果ガスを放出しないクリーンなエネルギーを生成する手段を手にできる。核融合が「究極のエネルギー源」と呼ばれる理由は、そこにある。
核融合には慣性閉じ込め方式や磁場閉じ込め方式など、いくつもの方法がある。その1つが、Zピンチという物理現象を使った「Zマシン」によるものだ。
Zピンチでは、プラズマを流れる電流が磁場をつくる。この磁場がプラズマ自体を圧縮(ピンチ)して、核融合を起こすのに必要な高温・高密度の状態をつくり出す。Zマシンは長いこと核兵器の性能をシミュレーションするために使われていたが、現在は核融合発電を目指す取り組みにも使われている。