世界の核融合研究では、AI・機械学習の活用が進んでいる
AI PLAYING A ROLE
トカマク型核融合炉で機械学習が重要な役割を担う JOHN D LOPEZ/ISTOCK
<夢のクリーンエネルギー実用化の最後の決め手に? 安定的な核融合反応に欠かせないプラズマの追跡などに活用され始めた>
最新の核融合研究で、人工知能(AI)の活用が進んでいる。核融合炉内部のプラズマの「塊」を機械学習で見つけて追跡することで、プラズマの動きを正確に捕捉し、核融合の実用化に役立てようというのだ。
核融合反応は原子核同士が融合することで大きなエネルギーを生む仕組みだが、巨大な熱と圧力を加えた環境が必要で、膨大な電力を消費する。
科学者たちは、消費した分を上回るエネルギーを発生させることに、まだ本当の意味では成功していない。
世界的に主流の核融合炉は、ドーナツの形をしたトカマク型だ。炉の内部に強い磁気によって超高密度・超高温のプラズマを閉じ込める方式で、このプラズマが核融合を引き起こす環境をつくる役割を担う。
プラズマは、乱流(不規則な運動)を起こす「塊」を炉の内縁部に形作る傾向がある。この塊は、プラズマの熱と粒子と炉が互いにどう作用するかを決める。
従って、その形成と動きを追跡することは核融合研究にとって非常に重要だ。
裏を返せば、塊の情報が分かれば、トカマク炉をどう制御すればいいかも、おのずと見えてくる。炉の安全を守り、安定して高温の状態を維持するためには、塊は内壁から遠ざけておく必要がある。
「プラズマの塊は、炉内のプラズマ発生の中心部から遠い場所、つまりプラズマと内壁との激しい相互作用を抑える必要がある場所に、大量の粒子と熱を運ぶことがある」と、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のクリスチャン・タイラー准教授(プラズマ物理学)は本誌に語った。
「このプロセスをよりよく定量化し、炉内の状況を推定することは重要な課題だ」
研究を加速させる大きなカギ
しかしプラズマの塊は1秒間に何千個も発生するため、一つ一つ追跡することは人の力では不可能だ。これまで科学者は、平均値を使ってこの課題に対処しようとしてきた。
今回、マサチューセッツ工科大学(MIT)などのプラズマ物理学者の研究チームはトカマク炉の反応映像を分析し、個々の塊を追跡して分析する機械学習モデルを開発した。