習近平が推し進める半導体の国産化、自給率を1桁から7割超へ
ACHIEVING INDEPENDENCE
中国では、半導体の消費量と製造量の間に大きなギャップがある。昨年の中国の半導体市場は約1865億ドルだったが、このうち国内で製造されたチップ(外国メーカーによるものを含む)が占める割合はわずか16.7%、中国に本社があるメーカーに限定すると6.6%しかない。
習近平(シー・チンピン)国家主席が15年に発表した製造業強化策「中国製造2025」では、30年までに半導体自給率を75%にすることが明記されている。1桁台から75%に引き上げろというトップからの猛烈なプレッシャーのなか、中国政府はさまざまな優遇策を通じて半導体メーカーを全面的に支援してきた。
これまでエレクトロニクス産業を育成してきた経験から、中国の政策立案者らは、たとえ生産規模や技術面で外国メーカーに後れを取っていても、大量の国産半導体メーカーを政策的に支援することには2つのメリットがあることを知っている。
第1に、大量の中国メーカーが市場を「食い尽くす」ようにすれば、2番手、3番手の半導体受託生産会社が入り込む余地を小さくできる。
ある報告書によると、24年末までに中国が新設予定の半導体製造工場は31。台湾は19、アメリカは12だ。新しい31工場のほとんどは、最先端ではなく旧世代のレガシー半導体を製造するため、TSMCやインテル、サムスン電子といった最先端メーカーにほとんど影響はない。しかし他のレガシーメーカーは生き残りが難しくなる。
軍事力「現代化」にも不可欠
第2に、政府の支援を受けた大量の中国メーカーの中から抜きん出たメーカーが1社か2社登場したら、これら「全国チャンピオン」は先端半導体でも競争力をつけ、ひょっとすると市場を支配できる存在に成長するかもしれない。
パソコンの聯想集団(レノボ・グループ)や、通信機器の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)は、いずれもこのプロセスをたどってトップに立った。SMICは先端半導体の分野で世界市場で競争し、アメリカの技術支配を打ち破ることができる中国企業の代表格になるかもしれない。
過去、中国で半導体の設計を手がける企業は米政府の制裁の影響で、TSMCの先進工程を使った新製品を発表できなかった。だが、SMICが7ナノ製造工程を拡張して、他の中国メーカーが利用できるようになれば、中国におけるAIや高速コンピューティングや5Gの活用に一段と弾みがつくだろう。