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開発が進む最新軍事テクノロジー「昆虫サイボーグ」【未来予報図03】

2022年3月10日(木)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

人探しにも、昆虫サイボーグが役立つ。昆虫サイボーグに、赤外線カメラ(IRセンサー)を搭載し、体温を検出する。検出した体温が人のものかどうかは、人工知能AIを使って判別する。人だと認識した場合は、アラームが鳴り救出に向かえるという仕組みだ。

昆虫サイボーグのカメラの捜索範囲は半径1.2m程度で、決して広いとは言えない。例えば、1機の昆虫サーボーグで5km2(2016年に発生した熊本地震〔マグニチュード7.3〕では、行方不明者の捜索範囲は5km2だった)の範囲を捜索するには242日かかってしまう。しかし裏を返せば、242機の昆虫サーボーグを投入できれば、1日で捜索できてしまう計算になる。

昆虫サイボーグは他にも、米国のDraper(Draperは、トンボの神経系を遺伝子組み換えして、光のパルスに反応できるようにする方法を開発しているという)、米国のカリフォルニア大学バークレー校などで、さまざまな昆虫で研究開発されている。

ビジネスの未来予報:人命救助・安全保障で活躍! 軍事市場で暗躍!

昆虫サイボーグは、以下の市場に販売されることが予想される。

●軍事、情報機関
昆虫サイボーグにマイクロコンピュータを埋め込めるようになれば、見た目は昆虫となんら変わりない。政府の国防機関や情報機関に販売され、犯罪防止のための情報入手や、軍事における敵地の偵察や攻撃などに活用されるだろう。ステルス性を持つ最強の軍事テクノロジーになるかもしれない。

●自治体
自治体に昆虫サーボーグを販売することで、台風、地震、津波などにより被災した地域で行方不明者の捜索に活用される。また、道路が寸断され行くことができない場所でも、詳細な被災状況を把握できるだろう。

●探偵・興信所
浮気調査、人探し、身辺調査などの依頼に応じて、昆虫サイボーグを使い情報収集する。探偵による尾行や張り込みなども不要になり、業務は効率的になるだろう。

●遺失物の捜索
落とし物などの捜索サービスを事業化することも考えられる。今後、IoTセンサーやGPSの小型・軽量化がさらに進み、GPSの位置情報の精度も向上する。これらの情報と併せて昆虫サイボーグを使えば、遺失物の捜索はそれほど難しくない。

●昆虫や動植物の生態調査
昆虫や動植物の生態調査にも活用できるかもしれない。大学や研究機関に昆虫サイボーグを販売すれば、昆虫や動物の行動、生息地、餌などを調査できる。また、人が立ち入るのが困難な場所での調査も可能となるだろう。

一般向けの販売は、犯罪の温床になる可能性もあるため、ハードルが高い印象。法規制や免許制にするなどの、さまざまな規制が検討されるだろう。

2021年時点で昆虫サイボーグは、ラボレベルでの実証実験がおこなわれている。今後、規模を拡大して国や自治体との共同研究が開始されるとすれば、2030年後半頃には先述の市場で活躍していくものと考えられる。

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『ビジネスモデルの未来予報図51』129ページより

ビジネスモデルの未来予報図51
 齊田興哉 著
 CCCメディアハウス

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