これが天の川銀河の中心だ 観測データのパノラマが公開される
20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせた(NASA/CXC/UMass/Q.D. Wang; NRF/SARAO/MeerKAT)
<超大質量ブラックホールが存在し、非常に観測しづらい天の川銀河の中心の、20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせたパノラマが公開された>
天の川銀河の中心には、太陽質量の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」が存在し、その重力や磁場に支配されて極限環境になっていると考えられている。
この領域は、地球からの距離が2万5800光年と比較的近くにありながら、塵やガスの厚い雲に覆われているため、非常に観測しづらい。
20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせた
このほど、アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星と南アフリカ共和国のミーアキャット(MeerKAT)電波望遠鏡の20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせた天の川銀河の中心のパノラマが公開された。
チャンドラX線観測衛星からのX線は、オレンジ、緑、青、紫と、様々なエネルギーを表わし、ミーアキャット電波望遠鏡の電波データは薄紫色と灰色で示されている。
(NASA/CXC/UMass/Q.D. Wang NRF/SARAO/MeerKAT)
「磁場の細い帯によってX線放射と電波放射が絡み合っている」
なかでも関心を集めているのが、X線放射と電波放射が絡み合った、長さ約20光年、幅0.2光年の細長い糸状のガス「G0.17-0.41」だ。
G0.17-0.41. (NASA/CXC/UMass/Q.D. Wang; NRF/SARAO/MeerKAT)
この糸状のガスを分析した米マサチューセッツ大学アマースト校の天文学者ダニエル・ワン教授は、学術雑誌「王立天文学会月報」(2021年6月号)に掲載された研究論文で、「磁場の細い帯によってX線放射と電波放射が絡み合っている」と示唆し、「このような帯は、『磁気リコネクション(磁気再結合)』と呼ばれる物理過程で、磁場が異なる方向に整列し、衝突し、互いに絡み合ったときに形成された可能性がある」と述べている。
磁気リコネクション現象のほとんどはX線では微弱、もしくは拡散しすぎるため、既存の観測方法では検出されづらい。ワン教授は、G0.17-0.41について「磁気リコネクション現象が続いている証拠だ」との見解を示したうえで、「磁気リコネクション現象の氷山の一角をとらえたものにすぎないだろう」と指摘している。