がん治療により効果的で安全な薬を開発する、特許取得済みAIシステム
――具体的なプロセスは?
例えば、小児癌の研究で実験に実験を重ねて、Xというタンパク質の働きを阻害できれば癌の進行を止められるという結論に至ったとする。急速に分裂を繰り返す細胞を全て殺すより、健康な細胞を傷つけずに癌を捕まえたい。そのために有効かつ安全な薬が必要になる。
ここでAIを使えば、従来の実験の2000倍の数の分子を検証できる。いくつかの組み合わせが(治療法の開発にとって)極めて有望だと分かったら、それらの分子を改良する。ここでもコンピューターを使えば一度に数十億の分子を判定でき、数十や数百の場合より「宝くじの当たり」を引きやすくなる。
先日発表した「10の10乗プロジェクト」では、小児癌治療の突破口を探すために100億個の分子のスクリーニング検査をAIで行っている。
――あなたにとって「成功」とは何か。
この分野の全ての人にとって、成功とは患者を助けることだ。アトムワイズは先日、米イーライリリー社と5億㌦以上の契約を結んだ。製薬業界を代表する大手企業が、AIによるアプローチを歓迎している。
――製薬業界の20年後について。
私たちは既に、過去最大規模のAIによる新薬開発システムを動かしている。1つの治療領域につき200以上のプロジェクトがあり、その約35%が癌関連だ。私たちの成功は、究極的には患者の成功だ。
<本誌2019年10月22日号「AI vs. 癌」特集より>
【参考記事】がん患者の42%が診断から2年で資産を使い果たす:米統計
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。