円高になると株安になるのはなぜ? 為替と株価の奇妙な関係
■基幹産業の構造的要因
日経平均を構成する225銘柄は、東証1部上場銘柄のなかから「流動性の高い銘柄」を中心に選出されています。つまり取引(売買)が活発に行われている、日本を代表する企業ばかりと言えます。最近はインバウンド効果で観光・サービス業も好調ですが、現在の構成銘柄を見ると、日本の基幹産業が、まだ自動車関連を筆頭とした製造業だということがわかります。
(参考記事)「時価総額」から見えてくる意外な事実 プロは常にここを意識している
ここで「まだ」という表現を使ったのは、今後の「変化」を考えるためです。稼ぎ頭となる産業が変化すれば、日経平均の構成銘柄も、それに合わせて変化することになるでしょう。その比率によっては、為替相場に対する日経平均の反応の仕方も変わってくることが考えられます。
「円高で株安」という病は、産業の変革によって治るかもしれないし、極度な輸出依存に陥れば、さらに悪化することも考えられるのです。
外国人投資家の「売り」もある
もうひとつ、「円高が外国人投資家の『売り』を呼ぶ」という点についても、少し解説しておきたいと思います。
円高・ドル安になるほど、外国人投資家が保有する株式に利益確定の注文が入ります。基軸通貨であるドルは投資の世界でも一般的で、外国人投資家の大半は、自分の証券口座にドルを入れて商いをしています(ドル建て)。ということは彼らは、日本株についてもドルに換算した値で見ているわけです。
日本の株式市場では株価が動いていない状態でも、為替が円高・ドル安に動けば、ドル建てで見た株価は上がります。つまり「為替差益」が発生するのです。利益確定をするために日本株を売る外国人投資家は少なくないでしょう。株式の値下がり分を為替差益によって補填しているとも言えます。
外国人投資家によるこうした売りが出ることも、結果的に日経平均を下げる一因となります。
まとめ
円高と日経平均の関係をシンプルにまとめると、次のようになります。
円高によって業績の悪化が懸念される輸出企業の銘柄が売られる
→ 輸出銘柄に影響を受けやすい日経平均株価が下落する
いま自分が保有(投資)している銘柄や気になる銘柄を並べたリストがあれば、ぜひ業種別に並び替えて、輸出銘柄と輸入銘柄に分けてみてください。為替相場が円高に大きく振れたとき、自動車や精密機器がどう売られ、対して輸入企業である食品や医薬品はどう動くのか。投資マネーが輸出から輸入へシフトする様子をリアルタイムで見られるかもしれません。
※当記事は2017年2月20日にアップした記事の再掲載です。
[筆者]
高野 譲[たかの・ゆずる]
株式・先物・FX投資家、個人投資家8年と証券ディーラー8年の経歴を持つ。現在は独立し、投資関連事業を法人化、アジアインベスターズ代表。著書に『図解 株式投資のカラクリ』『株式ディーラーのぶっちゃけ話』(いずれも彩図社)がある。