泡で、船で、AIで...... 海洋プラスチックごみ回収の最新イノベーターたち
バブルカーテンは、海洋での建設作業時に出る騒音を低減するために使われたりしている。TGBBは、この技術を世界で初めてプラごみ回収に使ったとのこと。2017年に、ボートセーリングやサーフィンが好きな友人同士の女性3人で起業。しばらくして、フィリップ・エアホーン氏(同社のテクノロジー長)も共同設立者に加わった。
筆者は数年前にTGBBを訪れ、共同設立者たちに会った。「水辺のごみをなくさないと動物たちの命が危ないとずっと気になっていて、私たちが行動を起こさなくてはと思ったのです。TGBBの活動によって、プラごみ問題への関心がより高まってほしいです」との言葉が印象に残っている。
TGBBのバブルカーテンは小規模だが、今後、設置数が増えていけば海洋プラごみ回収に一役買うだろう。
「オーシャン・クリーンアップ」 海と河川で、大規模なプラごみ回収
ダイビングをしていた時にたくさんのプラごみを見て「プラごみを回収しなくては」と決心したのは、オランダ生まれのボイヤン・スラット氏だ。氏は2013年、18歳のときに非営利団体のオーシャン・クリーンアップを設立した。氏は2014年国連の環境賞を受賞している。
オーシャン・クリーンアップが研究を重ねて生み出したのは、2種類の装置。TGBBのカーテンのように、河川のプラごみが海に流れる前に回収する装置と、海洋でプラごみを回収する装置だ。「2040年までに、海洋に浮かぶプラごみの90%を除去する」ことを目指し、川や海のプラごみの回収を続けている。4月初めの時点で、全装置で回収したプラごみは940万kg以上に達した。
河川用の装置「インターセプターズ」は、プラごみの汚染がとりわけ激しい世界の1000の河川を清掃しようと開発された。インターセプターズは、河川の状況に合わせ、数種類が考案されている。容量50立方メートルのプラごみを回収できるボート「インターセプター・オリジナル」は主要な装置だ。東アジアを中心に、すでに15叟以上が導入されている。3月末には、61 本の運河が流れ込むチャオプラヤー川の浄化のためにバンコクで初導入されたばかり。タイでは、バンコク市をはじめ天然資源・環境省なども回収プロジェクトのパートナーになっている。
船上の太陽光パネルによる発電を電源にした「インターセプター・オリジナル」は、コンテナボックスを積んでいる。ボートにつないだ長いフェンスによって浮遊しているプラごみをボートへと誘導する。流れてきたごみはベルトコンベアーでボート内に引き上げられ、自動でコンテナボックスへと入れられる。ほぼ満杯になると、コンテナボックスを川岸へと運ぶ担当者へメッセージが送信されるという。ごみは処理施設へ運ばれ、コンテナボックスはボートに戻される。
ほかには、小さい河口でU 字型に囲った浮遊フェンスでごみをためる仕組み「インターセプター・バリア」、川の上流と下流に1つずつ浮遊フェンスを設置し、上流側で主なごみをせき止め、下流側で残りのごみをキャッチする仕組み「インターセプター・バリケード」などもある。フェンス内にたまったごみは一挙に回収できる。