再エネはクリーンなだけではない!発電所設置地域にメリットを還元する地域共生エコシステム「e.CYCLE」
(写真はイメージです) Jenson-iStock
<再エネ発電所と地元住民間のトラブルを解消。「e.CYCLE(いいサイクル)」で双方にメリットのある関係を構築>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
再生可能エネルギーの普及は、脱炭素社会の実現に不可欠だ。しかし、再エネ推進の裏で、実は、再エネ発電所と地元住民間のトラブルが発生している。そこで株式会社まち未来製作所は、「e.CYCLE(いいサイクル)」事業により、再エネ発電所と地元の両方にメリットのある好循環を構築。e.CYCLEは、再エネ産地に社会的・経済的な豊かさを還元する地域共生エコシステムとなっている。
再生エネ需要拡大の影には地元住民とのトラブルも
2050年の脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギー需要が拡大している。特に太陽光発電にはポジティブなイメージを持つ人が多く、2012年に創設されたFIT(固定価格買取制度)も手伝って、日本各地で再エネ発電事業者が誕生。住宅やビルの上はもちろん、野原や山にも太陽光パネルがずらりと並ぶ光景も珍しいものではなくなった。
しかし、その裏では地元住民とのトラブルが頻発している。原因は、景観の悪化や地元住民への説明不足をはじめ、近年では土砂崩れや建設に伴う下流域での水質汚染といった、生活環境への悪影響の懸念など。トラブル件数も年々増加傾向にあり、経済産業省によると2016年10月~2021年7月の期間に738件の相談があった。再エネを長期的かつ安定的に実施していくには、再エネ開発事業者と地元住民間の信頼関係の構築が欠かせない。
こうした課題の解決を目指しているのが、2016年に横浜市で創立した株式会社まち未来製作所だ。まち未来製作所は独自に開発した再エネのアグリゲーションプラットフォームの「e.CYCLE(いいサイクル)」を主軸事業としている。
アグリゲーションとは「複数のものをまとめる」ことを意味する。すなわち、複数の再エネ発電所を束ねて管理し、効果的な市場取引を目指したりする仕組みだ。なお、この管理者のことをアグリゲーターという。
再エネのアグリゲーションプラットフォームは日本国内に大小さまざま存在するが、e.CYCLE独自の特徴は、日本唯一の「地域共生」を主軸にした再エネアグリゲーターだということだ。「地方が主役になるビジネスモデルを作ること」をミッションに掲げ、再エネの地産地消・地域間流通を推進し、さらに地域の課題やニーズを巻き込んで地域共生の持続性を担保したエコシステムの好循環に努めている。