世界自然遺産を守る経営を目指す... 星野リゾート 西表島ホテルとは
特産品ピーチパインの価値を上げ、経済的な循環を生み出す
エコツーリズムの実現に向けて、星野リゾート 西表島ホテルが最も大切にしているのが、「ホテル単体ではなく、島全体でのパートナーシップを通してエコツーリズムサイクルを創り上げていく」という視点だ。西表島には、島の自然を守るために繋いできた文化に価値があり、その価値を観光客に伝えるためには、地域の人々と宿泊客を繋ぐ必要があるからだ。
この考えが実践された取り組みの一例として、2021年から毎年開催している「春のピーチパイン祭り」が挙げられる。特産品であるピーチパインの生産者に来てもらい、宿泊客が美味しさの秘密を聞いたり、実際に味わうことのできるホテルイベントだ。
このイベントの成果について、細川氏は「生産者がピーチパインの魅力を直接発信することで、その価値を向上させることに成功しています。さらに、宿泊客の満足度向上にも繋がっており、双方にメリットがあることで、経済的な循環が生まれました。島の観光振興にも良い影響をもたらし、最終的にはホテルの利益にも繋がっています」と話す。
こうした取り組みが行われているのは、西表島ホテルを運営する星野リゾートが、経済価値と社会価値を両立する「CSV(Creating Shared Value)経営」を重視しているという背景がある。西表島ホテルに限らず、星野リゾートの各施設では、事業を通じて地域の課題解決に取り組み、地域のブランド力向上に貢献する活動に取り組んでいる。
自然環境や文化への配慮と、観光業の両立というテーマは、世界中の観光地で議論されている。オーストラリアやニュージーランドのように、すでにエコツーリズムリゾートが発展している国もある。西表島ホテルは、国内において、同様の性質をもつ観光地のモデルケースとなっていくのではないだろうか。