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自治体

雨水活用の先進地域として国際的な注目を集める東京の「意外なあの区」

2023年8月10日(木)20時25分
岩井光子(ライター)

一方、雨の魅力を発信し続けてきた同会としては、雨水をため、浸透させる暮らしの楽しみも味わってもらいたいと考えている。タンクの雨水を植物の水やりにも活用し、まちに緑が潤うようになれば、雨水活用に関心を持つ層はより広がりそうだ。

「コンクリートジャングルのまちに水が巡ればヒートアイランドの抑制が期待できますし、暮らしやすいまちには人が集まってきて活気が出ます。暮らしやすさと災害のレジリエンスをうまく両立させられたら」と、同会理事の笹川みちるさんは話す。

 
 
 
 
 

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雨水市民の会事務所前に今プロジェクトのモデルとして設置された雨樋プランター(左)。貯留された上の雨水タンクが一定の量になると上のプランターから順に巡って植物を潤す。一番下の水瓶にはメダカが泳いでいた

注目のNbS先駆事例

減災対策を地域活性や生物多様性の向上などと結びつけ、複数の課題解決に当たるのは最近のまちづくりの傾向だ。

こうした取り組みはネイチャー・ベースド・ソリューション(自然に根差した解決策=NbS)と呼ばれ、国際自然連合(IUCN)が2009年に提唱した比較的新しい概念である。地域の特性や自然環境を活かし、生きものの豊かさを尊重する気候変動対策は、持続可能な都市や地域づくり、住民の幸福な暮らしの実現など社会課題の解決とも結びつくという考え方だ。

同会はプロジェクトが終了する3年後の2025年には、全国の自治体の参考となるような小規模雨水活用の制度化を提言したいと意気込む。NbSの言葉が登場する前から、"雨と融和する"まちづくりを実践してきた墨田区の試みは今、世界最先端の事例として注目されている。

【参考】
雨水市民の会
https://www.skywater.jp
下町×雨・みどりプロジェクト
https://www.skywater.jp/rgc

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