女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
Lessons Over Lunch
行きつけの店のレジ係から「あなたは火曜日担当ね」
しかし、それは私たちの仕事のごく一部にすぎない。少人数で過重労働を強いられる私たちは、彼の週間勤務時間の残り38時間を埋めるために忙殺される羽目になった。コンピューターのスキルは第1次大戦中の生まれにしては優秀だったが、私たちと同じ作業をこなすのは困難だった。
最も大変だったのは、ヒューにやってもらう重要な仕事がないときだ。書類をホチキスで留めたりパンフレットにスタンプを押したりする単純作業の繰り返しは、刺激が足りなかった。
それでも彼は、どんなにつまらない仕事でも引き受けた。誰もいない静かな家で過ごすよりは、封筒に紙を入れる作業のほうがましだったようだ。
頼める仕事が思い付かないときは、早退するか休みを取るか、本でも読んでいてくれと伝えた。だが、それも簡単ではなかった。ヒューは時間を無駄にするのが大嫌いな人だったからだ。
彼は一人で昼食を取ることも嫌がった。毎日午前11時半になると、スタッフの誰かをファストフードチェーンのアービーズに連れて行き、割引クーポンをせっせと集めた。
私はファストフード嫌いだったが、このローテーションに加わり、週に1度は「ランチ当番」を務めるようにした。
ある日、マネジャーが戻ってきて、アービーズのレジ係に「あなたは火曜日担当ね」と言われたと報告したとき、オフィスがどっと沸いたことは今も忘れられない。90歳の老人が毎日別の20代の女性と一緒に店に現れる姿は、接客係の間で格好のゴシップの種だったのだろう。