【先進医療】遺伝子解析の進歩が変えた「がん治療の新常識」...驚異のパラダイムシフトに迫る
THE AGE OF GENETIC SEQUENCING
WGSは患者の不安の種になるような情報まで大量にもたらしかねないと、カナダのニューファンドランド・ラブラドール州立メモリアル大学医学大学院のブレンダ・ウィルソン副学長も警告する。
「それを知ったところで何もできないような情報は(患者に)提供すべきではない」
パパエマヌイルは違う考えだ。「私が癌患者なら、『あなたのゲノムの1%を見たが、手の施しようがないようだ』と言われるより、『全てを見たが、今できることは見つからなかった』と言われるほうがいい」
FDAの認可が大きな障壁に
とはいえ、特にアメリカでは、WGSの普及には当局の規制という障壁が立ちはだかる。分子レベルの検査には米食品医薬品局(FDA)の認可が必要だが、現在の方式はWGSの検査には使えそうもない。
遺伝子検査では、もともと1回の検査で1つの変異を調べていた。
検査を行うたびに毎回FDAの認可を受けることも大きな負担になるが、ゲノム全域に及ぶ検査にこの方式を適用するのはどう考えても無理があると、イミエリンスキは指摘する。
現在、多くの病院はFDAの認可を受けずにWGSを実施している。
「ゲノム全域にわたってしらみつぶしに(変異を)調べるために、検査したいあらゆる要素を1つずつ厳密に提示するなんてことが可能だろうか」と、コングは問う。
WGSの安全性や有効性をどうやって審査するのか。コングによれば「これは途方もない難題だ」。