【先進医療】遺伝子解析の進歩が変えた「がん治療の新常識」...驚異のパラダイムシフトに迫る

THE AGE OF GENETIC SEQUENCING

2025年1月30日(木)19時41分
アレクシス・カイザー(ヘルスケア担当)

newsweekjp20250130051129-c0819ff9e39e07d6d3f855cfb0850d8cd3d2fe91.jpg

NGSでは治療法が見つからなかった患者もWGSで救われるケースがあると、ソリットは話す RENAE WHISSEL

既存の治療法では治せない希少癌や転移が進んだ癌であっても、WGSで新たな治療の選択肢が見つかることもある。

NGS検査は多くの場合、乳癌や大腸癌、前立腺癌や肺癌といった一般的な癌を対象に作られており、使えない患者が3~4人に1人はいるとパパエマヌイルは言う。

ではなぜ、専門家たちは最初からWGSを使おうとしなかったのか。


ニューヨーク大学ランゴン医療センターのパールマッター癌センターでゲノム研究プログラムの責任者を務めるマルチン・イミエリンスキによれば、当初の研究では治療の標的とすべき主要な変異が見つかるのは全ゲノムの約0.1%にすぎないと考えられていたという。

だから最初の頃の検査では、そのほんの一部のゲノムに照準を合わせたわけだ。

また、MSKの病理・臨床検査部長で、ソリットと共に分子腫瘍学センターの共同所長を務めるマイケル・バーガーは、当時は解析とデータの保存にかかるコストが高すぎてWGSには手が出せなかったと語る。

ソリットによれば、癌治療のプレシジョン・メディシンにおいて標準的なNGS検査が標準的な選択肢となるのは、ゲノム解析を受ける患者の約3分の1だ。残る3分の2の患者には役に立たない。

その患者の遺伝子変異を標的にする薬が存在しないか、分析対象の幅が狭すぎて変異を見つけられないからだ。

小児癌の治療にも熱い期待

だがWGSなら、残る3分の2の患者を救える可能性がある。パパエマヌイルの研究チームは、WGSを行った全ての癌患者で変異を見つけている。その約半数が治療法を見つけるのに役立つであろう臨床的に意味のあるバイオマーカーだった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、復活祭の一時停戦を宣言 ウクライナ

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 5
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中