【先進医療】遺伝子解析の進歩が変えた「がん治療の新常識」...驚異のパラダイムシフトに迫る
THE AGE OF GENETIC SEQUENCING
既存の治療法では治せない希少癌や転移が進んだ癌であっても、WGSで新たな治療の選択肢が見つかることもある。
NGS検査は多くの場合、乳癌や大腸癌、前立腺癌や肺癌といった一般的な癌を対象に作られており、使えない患者が3~4人に1人はいるとパパエマヌイルは言う。
ではなぜ、専門家たちは最初からWGSを使おうとしなかったのか。
ニューヨーク大学ランゴン医療センターのパールマッター癌センターでゲノム研究プログラムの責任者を務めるマルチン・イミエリンスキによれば、当初の研究では治療の標的とすべき主要な変異が見つかるのは全ゲノムの約0.1%にすぎないと考えられていたという。
だから最初の頃の検査では、そのほんの一部のゲノムに照準を合わせたわけだ。
また、MSKの病理・臨床検査部長で、ソリットと共に分子腫瘍学センターの共同所長を務めるマイケル・バーガーは、当時は解析とデータの保存にかかるコストが高すぎてWGSには手が出せなかったと語る。
ソリットによれば、癌治療のプレシジョン・メディシンにおいて標準的なNGS検査が標準的な選択肢となるのは、ゲノム解析を受ける患者の約3分の1だ。残る3分の2の患者には役に立たない。
その患者の遺伝子変異を標的にする薬が存在しないか、分析対象の幅が狭すぎて変異を見つけられないからだ。
小児癌の治療にも熱い期待
だがWGSなら、残る3分の2の患者を救える可能性がある。パパエマヌイルの研究チームは、WGSを行った全ての癌患者で変異を見つけている。その約半数が治療法を見つけるのに役立つであろう臨床的に意味のあるバイオマーカーだった。