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がん患者

先達たちの闘病記から学んだ癌と共に生きる意味

I Found Solace in Cancer Memoirs

2024年12月19日(木)12時23分
エリオット・ジュリスト(心理学者)

クインは脳腫瘍の一種(膠芽腫)で死にゆく運命を十分自覚している(42歳で死去、闘病記は死後に出版された)。癌との闘いで「大切なものをほぼ全て、進んで、心の底から手放さなければならない」が、おかげで今をより深く感じられる。神は常に自分と共にある、と。私は彼女のようにはいかないが、死を前にしての気高さに深く共感した。

心を揺さぶられたのはアメリカの作家オードリー・ロードの『癌闘病記』。出版は40年以上前だが、乳癌の宣告に対処する試練を印象的に捉えている。「死を無視せず、死に屈せず、生と統合する方法があるはずだ」


癌は死を意識させる。差し迫ってはいなくても死の影は付きまとう。それでもロードは「恐れを乗り越え、自分の限界に対する怒りを創造的なエネルギーに変えられるようになる過程で、恐れずに生きていく術を身に付けていく」。

喜怒哀楽も激しくなる。ロードは乳房切除後に人工乳房が避けられないという見込みに激しく抵抗。治療から10年以上生き、乳癌ではなく肝臓癌と卵巣癌で死去した。

私はこれらの闘病記に慰められた。生き抜いて意味のある人生を送ろうと奮闘する姿にわが身を重ねた。香港の作家、西西(シーシー)の『哀悼乳房』が力説することも、身をもって経験してきた。自分の体との新しい関係、特にわずかな変化にも敏感になるのはつらいときもあるが、全体としては驚くほど充足感がある。

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