最新記事
サイエンス

「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性...むしろエサのほうが栄養価が高かった【最新研究】

2024年11月26日(火)14時45分
ロビン・ホワイト(ネイチャー担当)

この研究によれば、これらの天然魚の切り身はカルシウムの量がサーモンの5倍。ヨウ素は4倍、鉄、オメガ3脂肪酸、ビタミンB12、ビタミンAは1.5倍以上だった。ただし、セレンと亜鉛はサーモンのほうが多かった。

これらの天然魚に含まれる栄養素は、心血管疾患や脳卒中などの予防に役立つ。


「私たちは飼料用天然魚のカルシウムとヨウ素の約80%を無駄にしている。特に成人女性と10代の少女は、これらの栄養素を十分に摂取できていないことが多い」と、スターリング大学水産養殖研究所のリチャード・ニュートンは論文の解説で述べている。

「養殖サーモンは優れた栄養源であり、家畜や養殖魚の中で最高レベルの飼料変換能力を持っている。この産業が成長を続けるには、飼料魚に含まれる重要な栄養素をもっと効率的に摂取する必要がある。漁業の副産物や持続可能な方法で調達されたイカナゴのような飼料魚のより戦略的な活用が成功のカギだ」

この研究では、飼料に使われる天然魚は養殖サーモンに比べ、比較的少ない量を食べるだけでこれらの栄養素を摂取できることも分かった。飼料用天然魚の3分の1を食用にすれば、魚を食べることで摂取する栄養素の量を最大化できるという。

「食べる魚の種類を少し変えれば、一部の栄養素不足を改善し、人類と地球の両方の健康を向上させることができる」と、ウィラーは指摘する。

【参考文献】
David F. Willer, Richard Newton, Wesley Malcorps, Bjorn Kok, David Little, Anneli Lofstedt, Baukje de Roos & James P. W. Robinson, Wild fish consumption can balance nutrient retention in farmed fish, Nature Food volume 5, pages221-229 (2024)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、麻薬対策で米と協力継続の用意 外務省が声明発

ビジネス

十倉経団連会長、日本企業への影響注視 トランプ氏の

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、大幅な2%割れに警戒を=ポルト

ビジネス

石破首相がバイデン米大統領に書簡、日鉄のUSスチー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中