最新記事
健康

「砂糖の代用品」が心臓発作と脳卒中のリスクを高める可能性【最新研究】

Warning As Sugar Substitute May Increase Heart Attack and Stroke Risk—Study

2024年8月24日(土)09時58分
ジェス・トムソン
砂糖

722737-pixabay

<「一般に安全と認められている」成分として分類されているが、再評価する必要性も>

一般的な砂糖の代用品が心臓発作と脳卒中のリスクを高める可能性があることが「動脈硬化・血栓形成および血管生物学(The Journal Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」誌の最新論文で指摘されている。

「エリスリトールを含む食品や飲料の標準的な摂取量が、血栓形成を直接的に引き起こす可能性がある」と、クリーブランド・クリニックの心不全および心臓移植医療部主任研究員であり、本研究の共同執筆者でもあるW.H.ウィルソン・タン医師は述べる。

したがって人工甘味料のエリスリトールは、これまで考えられていたほどに安全ではない可能性があり、その安全性を再評価する必要性を指摘する。

【関連動画】エリスリトールの安全性に関する最新情報 を見る


 

エリスリトールは砂糖の7割の甘さを持ちながらもカロリーはわずかその6%。炭酸飲料、乳製品、ステビア甘味料などさまざまな食品や飲料の砂糖の代用品として一般的に使用されている、低カロリーの甘味料だ。

果物や野菜にも自然に含まれており、人体内でもグルコースの分解過程でわずかな量が生成される。摂取後に大部分は尿として排出されるが、体内に蓄積する可能性がある。

アメリカ食品医薬品局(FDA)と欧州食品安全機関(EFSA)は、エリスリトールを「一般に安全と認められている」成分として分類しており、食品や飲料に自由に使用できる。しかし、最新研究に基づいて再評価が必要かもしれないと研究者らは指摘する。

エリスリトールを含む食品を摂取した健康な人々の血中のエリスリトールレベルが、摂取しなかった人々と比べて1000倍以上増加することが判明。また、エリスリトールの摂取後に血栓形成が著しく増加したことも明らかになった。

血栓は傷の治癒に不可欠だが、体の重要な部分への血流が妨げられると、心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性がある。

本研究は昨年発表された研究に続くもので、他の研究でも、一般的に使用される他の人工甘味料からさまざまな健康への影響が見つかっている。

アスパルテームは2型糖尿病、肥満、気分障害、ホルモンの乱れ、空間記憶などに影響を与えることが確認されており、スクラロースは腸細胞の損傷に関連している。

「多くの自然および合成の低カロリーの甘味料があり、それぞれが独自の化学構造を持っています。低カロリー甘味料が体内の細胞と異なる方法で相互作用する可能性があり、その結果として影響を与えるのです」と、サウスカロライナ大学のリンジー・シャイアー教授は本誌に語っている。

また、キシリトールも最近、血栓形成に影響を与え、心臓発作や脳卒中のリスクを高めることが同じ研究チームによって判明した。

「心臓病は世界的にも死因のトップに入っています。私たちが口にする食品が隠れた要因にならないようにしなければなりません」とクリーブランド・クリニック・ラーナー研究所の心血管および代謝科部長で共同執筆者のスタンリー・ヘイゼン医師は語る。

エリスリトールの影響についてさらなる研究が必要であり、安全性について再評価する必要があるかもしれないと本研究は結論づけている。

【参考文献】
Witkowski, M., Wilcox, J., Province, V., Wang, Z., Nemet, I., Tang, W. H. W., & Hazen, S. L. (2024). Ingestion of the Non-Nutritive Sweetener Erythritol, but Not Glucose, Enhances Platelet Reactivity and Thrombosis Potential in Healthy Volunteers. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology.

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中